Part6


 突如現れた【従魔】たちを見て、エミリアはエドガーに。


「エ、エド……今のって召喚、だよね?」


「ん、エミリア。どうやら落ち着いたみたいだね……アルメリアも」


「はい。すみません、情けないところばかり見せてしまい」


 魔物の恐怖からようやく脱した姉妹は、エドガーの横に来ると【従魔】たちを見る。ローザに並び立ち、大量の魔物を屠るその姿に、二人は自分の情けなさを痛感すると共に、おのままでは駄目だとも感じたことだろう。


「いいんだよ。僕だって、本当は怖い。ただ知識があるから、冷静にいられるだけさ。それに、僕が落ち着いていられるのも、二人のおかげだし」


「え?」


「どういうこと?」


 エドガーとて、知識で知っていても実践は初めてだ。

 本当は魔物は怖いし、戦いなんてしたくはない……エドガーの場合は、させたくないだが。

 それでもこうして冷静に、落ち着いて召喚ができたのは、ロヴァルトの姉妹が予想以上に怖がっていたからだ。


「なんだもないよ。さぁ、ローザさんに声をかけて先へ進もう――皆!!ここの魔物は頼んだよっ!一番倒した者には、後でご褒美だ!!」


「「「「!!」」」」

「「「「!?」」」」

「「「「っ!」」」」


 十二体の顔色が変わる。

 獣のような視線で【石魔獣ガリュグス】を睨むと、散開して各個撃破に向かった。そしてそれと同時に奥への道が開る。


「行けるわよっ!こっちっ!!」


 奥への道に気付いたローザが右手から炎を上げて知らせる。

 それに気付いたエドガーも、姉妹の手を取り。


「二人共、走るよっ!!」


「え、でも良いの!?【従魔】の皆は……!」


「まだ彼女たちが戦っていますがっ」


「――良いね皆!目的は魔物の殲滅っ!逃がしたら駄目だから!倒したら魔法陣から帰還っ!そのまま通常任務に戻ることー!」


 エドガーの指示に、【従魔】は全員。


「心得ております!」ミュン(情報屋)

「アタシが全部殺すっっ!」ティニー(旅人)

「殲滅っ」ウェンディーナ(従業員)

「うりゃぁぁぁぁ!」ココ(旅人)

「あぁエドガー様ぁ……」セリー(情報屋)

「ほらほら、早く倒しちゃおっ」アリカ(メイド)

「あ〜あ〜、もう何がなんだか〜」メジュア(従業員)

「皆、指示を聞きなさいっ!」フィルウェイン(メイド)

「……久し振りに会えたのに……」ヨル(旅人)

「突撃ーーー!」ファイ(情報屋)

「もう!ズルいですよっ!」ホリィ(従業員)

「あ!お嬢様たちも頑張ってー!」ナスタージャ(メイド)


「――ねえエド!全員同時に喋って何がなんだかっ!」


「僕もサッパリだよっ!さぁ早くっ!!」


 エミリアと同意見を発し、エドガーはアルメリアを引くように促す。


「わかりました……皆さん、頼みますっ!」


 森の奥地へ、エドガーたちは走り出した。

 先行するローザは、まだ奥にいる【石魔獣ガリュグス】を薙ぎ倒し、赤い剣と炎で縦横無尽に戦っている。

 走る後ろ姿は、真紅のドレスの裾が舞い、炎が踊り、生々しい肢体を曝け出すような荒々しいものだったが、エドガーは思った。


 その姿は……かつてこの世界の赤き王姫に酷似している。

 赤き長尾を持つ鳥類をイメージさせ、戦場を麗しく靡かせ駆けたと言われ、その見目麗しい容姿と、圧倒的な闘いから――【赫鴒せきれい剣姫】……と。

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