Part2


 この世界とローザの世界、共通の認識である魔物の情報。


「そう、大体あってるわね。でも、油断しなければ良い話でしょ?って言っても、今来る反応の限り……ゴブリンではないと思うけど。私も言ったでしょ?程度・・のものだって」


「それはそうですが……わたくしたちにとっては、どれも同じような気が」


 アルメリアは弱気だった。

 しかしエドガーは、そんなアルメリアに笑顔を見せた。


「そうさ。だから気にしなくてもいいんだよ、アルメリア。来るのが知らない存在ならどれも同じ。例え【従魔】クラスの魔物だろうが、それこそゴブリンだろうがね。まずは見て、知って、覚えるんだ。騎士学校で学ぶ勉強と同じだよ、知らなければ教えてもらえば良い、エミリアもね」


「う、うん」


「……はい。では、そうさせて頂きます」


 エドガーは二人の横に並び立ち、念のためか、ローブの裏からチェーンアクセサリーを取り出して持つ。


「――来るわ。見ていなさいキミたち、私がどれだけの存在か……キミの召喚がどれだけの価値がある術なのか、私が証明してあげるからっ!!」


 ローザは赤い剣身の剣を振るう。

 空気を切り裂く赤い剣は、宙に赤い軌跡を描いた。

 そしてそれが合図となり、森の奥からゾロゾロと、地を這うような音を鳴らす存在が現れる。


「な……」


「あれは、獣……??」


 姉妹は驚く。エドガーは観察するように呟いた。


「短い手足の四足歩行、ゴツゴツした皮膚、蛇のような長い尾、遅い動き……そして最大の特徴は、目のない顔」


 【召喚士】の継承知識から、その情報を導き出す。

 おとぎ話だけではない、歴史で語られていた史実として、その魔物は存在した。


「……バジリスクね、あれは。気をつけなさいキミたち、あれは目がないのではなく、閉じているだけよっ」


 ローザは自分の世界の魔物に例える。

 エドガーは嬉しそうに。


「やはりローザさんの世界でも……名前は違うけど、この世界では【石魔獣ガリュグス】と呼ばれていた魔物のはずです。大昔、何百年も前に実在した、対象を石に変え、捕食する魔物ですっ!」


「【石魔獣ガリュグス】ね……覚えたわ」


 ローザの世界に存在するバジリスクという魔物と、この世界で存在した魔物。

 【石魔獣ガリュグス】という石の魔物が、エドガーたちの前に無数に出現した。


「……あれが、魔物……ぜ、全然違うじゃん、メジュアとー!」


「メジュアの姿に、恐怖は感じませんでしたけど……あれは、なんて恐ろしい……わたくしの考えは、なんて浅はかなっ……」


 尻込みする姉妹を見て、エドガーは目配せだけでローザに合図をする。

 そして二人には冷静に、落ち着かせるように言葉をかけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る