Part8


 エドガーも、召喚してからは特にローザに対しての要求はしていない。始めの願い(アルベールとメイリンを救うこと)と、この世界での生活を保証しただけだ。

 それでも快く受け入れてくれたことを、エドガーは深く感謝している。


「ありがとう、ローザさん。この件が片付いたら、ゆっくりとこの国を案内します。きっと、ローザさんにも気に入って貰えると思うから」


 エドガーは、ローザとの関係を少し引いた立場から見ている。

 従来、【召喚士】と召喚者は命令し、命令される立場。【従魔】のように、エドガーの指示を従順に聞くのが常だろう。

 しかしエドガーは、過去に召喚し、そして去って行った三人のこともあり……慎重、もしくは怯えているのかも知れない。一歩引いた態度を取っているのも、それが原因だ。しかし、エドガーにその自覚があるかはわからない。


「ええ。そのときは、貴女にも手伝って貰うわよ?」


 ローザは笑顔で、エミリアの肩に手を置いた。

 どうやら、エミリアを気に入ったようだ。


「えっ、あ、あたしぃ!?」


「……」


 笑顔でエミリアを指定したローザ。対してエミリアは、苦笑を浮かべて戸惑う。

 そして、気にし過ぎるタイプのアルメリアの顔は青かった。

 【聖騎士】として【召喚士】の監視を命じられている立場からか、それともローザという異世界の人間に対してのものなのか。


「森にある気配は、多少大きいものが一つ、小さいのが二つね。それと……歯牙にも掛けない程度のものが無数に」


 ローザはいつの間にか自分の周囲に炎を輪を形成すると、その前方……胸の部分にある炎の球体を見て言う。少し大きな物が一つ、その少し後方に同じサイズの球体が二つ。それから、ペン先で叩いたような点が幾つも。


「大きいのがリーダー格のコランディル・ミッシェイラ。他の二つが、部下の二人だろうね。やっぱり、こんな森にノーヒントで来ると思ってたのか……」


「じゃあ、このちっちゃい点は?」


 エドガーは呆れ半分、怒り半分といった表情で森を見た。

 エミリアは小さい点が気になるようだ。

 そんなエドガーを見て、ローザはその炎の球体を手のひらの上で一つにし……大人の頭部ほどの火球を作ると、それを天に掲げる。


「小さいのは気にしなくてもいいわ。直ぐにわかるし……まずは間抜けな悪党に、教えてあげましょう……お望みの【召喚士】が来たと、ね!!」


 天に掲げた右手から、炎の弾が発射される。

 しかしそれは火球ではなく、炎の柱となって。

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