Part5


 赤い光は煌々と眩く【召喚の間】を照らし、最大限に輝いた。

 真っ白になった室内には灼熱の如き熱風が起こり、遠くに離れた姉妹二人にもその熱量をぶつけた。


「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」


「お嬢様っ!」


 ――ガッ――

 と、吹き飛ばされそうになった姉妹を誰かが受け止めた。


「フィ、フィルウェイン……?」


「遅くなり申し訳ありません。ですがこれは……エドガー様」


 二人を受け止めたのは、竜の【従魔】フィルウェイン。

 ロヴァルト家のメイドであり、今は上の宿で臨時従業員をしているはずだ。


「フィルウェイン、どうしたのです?エドを見に来たのですか?」


「い、いえ……ホリィが戻りましたので、その報告を。ナスタージャはそのまま働いていますが」


 メイリンの様子を見に行っていたホリィが戻って来た。

 その報告を受け、仕事に戻ったホリィの代わりに報告に来たのだろう。


「あ……光が落ち着いて来たよっ、姉さん!」


「ええ、見えて来ま――」


 したね。と、アルメリアが口にしようとしたが、その言葉は止まる。

 その光景に、その姿に、その圧倒的で神秘とまで言えそうな――彼女の姿に。




 光が治まった【召喚の間】に、静寂が訪れた。

 中央の魔法陣は輝きを失い、円形白線のような状態に。触媒として捧げた複数の【魔具】は消滅し、中央の要石……【消えない種火の紅玉インフェルノルビー】もそこにはなかった――ただ。


「……貴女が」


 エドガーのその声音は、まるで懐かしい者に……愛しい者に囁くような、歓喜に満ちたそれにも聞き取れた。その声が掛けられる対象は、魔法陣の中央にスッ――と降り立ち、ゆっくりと瞼を開く。


 まるで快晴のような、大きな空色の瞳。

 生え際のクリムゾンレッドと、肩口からのローズピンク、二色がグラデーションした臀部まであるロングヘア。

 均整の取れた美しい身体は、特にその胸部……大きな乳房が目を引く。ウエストは細くくびれ、臀部は張りが有り、肌も艶々だ。

 誰がどう見ても、スタイルの良い美人だと……そう判断するに事足りる情報だった。


 そんな女性が、エドガーを空色の瞳で見据え、少し混乱したように自分の身体を確かめる。彼女は着の身着のまま……ではなく、おとぎ話の女神も驚くような、抜群のスタイルを惜しみもなく披露する、生まれたままの姿、所謂……全裸だ。

 彼女は特に首元を気にしているようだった。まるで首がくっついていることに驚いている、もしくは安心しているかのように擦ると、ようやくエドガーに。


「――キミが……私を?」


 ――ゾクリ……――


「!!」


 声を聞いた瞬間、エドガーの背筋にゾクゾクとした感覚が駆けた。

 ピタリとはめ込まれたパズルのような、絶対に間違いでは無かったという安心感と確信。先ほど自分が出した甘い声音が、それを物語るように。

 女性は凛とした佇まいから一歩前に歩み出す。その仕草一つ一つが、エドガーの心に何らかの影響を働きかけて。


「あ、ああ!僕が貴女を呼んだ。ここは貴女が住んでいた世界とは違う、別の世界だ……故あって貴女を招いたこと、まずは謝罪をさせてほしい」


 エドガーは頭を下げた。

 そして心を落ち着かせ、再度顔を上げると自己紹介を。


「僕の名は――」


 しかし女性は、スッ――と左手を上げ、エドガーの言葉を制した。

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