Part4


 【召喚の間】が、眩くも赤い光に包まれている。

 エドガーの魔力と数種類の【魔具】に反応して、まるであちら側から、強制的にこちらへやって来るような、そんな衝撃と雰囲気を漂わせている。

 その異質な空気と緊張感に、エドガーは姉妹を下がらせ、背のベルトから短剣を取り出した。その短剣は、昨日アルベールからの贈られた誕生プレゼントだった。

 エドガーは振動を続ける魔法陣の正面に立ち、その短剣で自分の左手の平を……斬った。


 ――シュッ!――


「エドっ!」


「自分の手を切ったの!?」


 姉妹が心配そうに声を上げるが、エドガーは逆の手で制し「平気だよ」と。


 ポタタ……と、魔法陣に鮮血が滴った。その血は魔法陣と【赤帝馬のたてがみ】を縫い合わせるように結合し、周囲に煌めく薬品、【プリンセスブラッド】を吸収し始める。


「――レオマリスの血……【召喚士】の血が汝に問う。猛炎を操り身に纏う“麗姫”よ、剣帝の名をほしいままにする実力者よ!供物はここに揃った、今こそ我が呼びかけに答え、その姿を見せよっ……幾つもの時を超え、異なる世界を超えて、この場所こそ、この世界こそが、汝のまことの世界なりっ!!」


 滴るエドガーの血は、真紅の如く。

 世界に唯一人、【召喚士】の血は異なる世界を繋ぐ架け橋。

 赤き血潮に影響され、召喚される人物は肉体を再構成される。


 ――パァァァァァァァァァァァァァァァァァァ――


 紅く光り輝く魔法陣の光は、中央に吸い込まれるように集まりだす。

 それは要石……【消えない種火の紅玉インフェルノルビー】を中心に、光が人の形を整えているようにも見えた。


「ひっ!!――ね、姉さん!ひ、人影がっ!!す、凄いっ!本当に人が出てきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「み、見えています……これが、エドの召喚……異世界召喚っ!エ、エミリアは少し落ち着きなさいっ!こら、近付いてはいけません!!」


 後方からの声はエドガーにも聞こえている。

 驚嘆と感嘆、そのどちらも含まれた、超常現象を目の当たりにした人物の声がはっきりと耳に入る。テンションが違いすぎて、緊張感が薄れるエドガーは苦笑しつつも、気を取り直して祝詞のりとを続ける。


「我が名はエドガー、エドガー・レオマリス!!汝の主にして、世界を繋ぐ【召喚士】!契約はその心に刻め!われが道標と成りて、汝の行く末を導こうっ!!――いでよ、異世界の英雄!炎のように猛り、鎮まることのない情熱を以って力を示し、この世界に……祝福をっ!!」


 エドガーは両手を広げ、赤い光を受け入れるように構えた。

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