第10話『異世界召喚〜炎〜』全9Part
Part1
その場所は明るく、
壁に設置された【明光石】は煌々と光り、天井から床までしっかりと照らし、【送風石】は密室であるこの地下に、長い時間滞在が可能な酸素を供給していた。
「なんだか、地下にいることを忘れちゃいそうじゃない?姉さん」
「そうですね……夜の屋敷でもここまで明るくはありませんし、宿もそうですが、やはり特別なのですね……【召喚士】という存在は」
姉妹の姉、アルメリアは【召喚士】の監視を言い渡されている立場の【聖騎士】だ。しかし今までは、特に変わった行動をしてこなかったエドガーをどう聖王家に説明するかで悩ませられていたが、これでは逆に説明し辛い。
アルメリアは立場上、報告を怠ることはできない。だが彼女は彼女なりの報告の仕方で、エドガーに害が及ばないように慎重にして来たつもりだった。
(これでは、流石に報告せざるを得ませんね……)
【召喚士】は聖王家に仇なす者ではない。その根本は変わることはないが、それでも……この異質な場所に来て思う。五年前に存在した、三人の女性。その圧倒的な力に思う。実際、五年前には大暴れしているのだから。
(
一人準備をする幼馴染の背中を見ながら、アルメリアは葛藤を強いられていたのだった。
◇
異世界召喚には、特定の手順が必要だ。
まずは魔法陣。【陽赤土】と呼ばれる特殊な材質の塗料で書かれた、【召喚士】にしか読み解けない文字、【ルーンス文字】と呼ばれるものだ。
それ等で円形状に、直径5メルド(m)の魔法陣を描く。
そしてその魔法陣の中央に、要石となる【輝石】を置く。
今回は【
「――と、言うわけで。ここまでは良いかな?」
「ええ」
「よくわかんなかった!」
茶髪の【召喚士】は、自分の好きなことを説明するような笑顔で姉妹を向く。
しかし残念ながら、姉妹には伝わってはいないようだ。
「ははっ。まぁ、子供の落書きのようにも見えるし……真ん中に“石”を置いても、今は特に変わり映えしないしね」
ほんの少し肩を落とし、少年……エドガーは両手に【魔具】を持った。
「それ、【魔具】なの?あたしにはさぁ、ガラクタにしか見えないんだけど」
「確かに、その赤いのは……箒の毛束、ではないのですか?」
「……え……あ、あははっ」
二人が見ているのは、エドガーの持つ赤い毛束のような物。
エドガーのはその言葉に笑う。赤い毛束を箒と例えたことが、それはもう面白かったらしい……。
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