Part8


 アルメリアとエミリアは階段の暗さに少し怯えていた。


「ねぇエド、灯りないの?」


「灯りかぁ。今はいいかな……って、あのちょっと、歩きにくいんだけど……?」


 この魔具、【明光石】は特殊だ。

 他の【輝石】とは違い、戦闘には不向きな“石”だが、こと灯り関連に関しては別格。松明やランプの油など相手にもならないほどの明るさと燃費。魔力さえあれば、一生光り続けるのだから。


「だって!!く、暗いし」


「流石に、見えないとわたくしも……」


「……」


 僕はきっと顔をしかめているだろう。

 僕には歴代の【召喚士】から継承した知識がある……その中には、勿論性的な知識だってある。しかし経験は皆無。

 知っているだけで、両腕にぶつかるその柔らかさは始めての感触だったのだ。だから顔を顰めているはず……はずっ。(柔らかいのは片方だけ)


(エドの顔が赤い……もしかして!)

(照れているようですね、珍しい。可愛いところもあるのですね)


 不意に、姉妹二人が「ふふふっ」と笑い出す。

 怖いんじゃなかったのかい?……理解し難いなぁ、女の子は。




 程なくして、僕たちは地下へ到着。

 多少ジメジメはしているが、壁には永劫に灯りを放つ【明光石】と、換気のできない地下に風を送るための【送風石】という【魔具】が設置されている。


「明るいね」


「あちらが【従魔】たちの部屋、ですか?」


 階段を下りて直ぐ、右手の廊下奥に見える扉。

 そこが【従魔】、十二体の女性たちの部屋だ。そして真っ直ぐ、奥が倉庫と【召喚の間】。


「そうだよ。扉の奥に部屋が十二部屋ある」


「宿じゃん」


「ははっ、そうかもね。で、目的の場所はあっち」


 僕は興味津々の二人を置いて奥へ進む。

 さっきまで僕はここで準備をしていたから、後は実行するだけだ。

 必要な【魔具】も、もう【召喚の間】に置いてあるからね。


「あ!ねぇエド、そう言えばウチのメイドはいいの!?」


「す、すっかり忘れていましたね……エド、フィルウェインが、兄の部屋から魔力を感知したと言っていました」


「うん、フィルウェインからは聞いてあるよ。ここに下りる前にね」


 二人は「いつの間に」と声を重ねた。


「ごめんごめん、でもフィルウェインの話のおかげで、ある程度の情報を得ることができたよ」


「え、あれだけで、ですか??」


 アルメリアは、直接フィルウェインに聞いているはず。

 しかし、魔力や【魔具】と言われてもピンと来なくても仕方がない。


「誰にもバレずに、アルベールを連れ出せたのは……犯人が、から来たからだよ」


「「空?」」


 そう。【魔石】の多くが、飛行関連の能力を有する。

 例え小さな【魔石】……【小魔石の欠片デコイ】のような物でも、背に翼を与える力がある。

 【魔石】の多くは、その昔――悪魔と呼ばれた存在が封じられたと言われている。

 【聖石】は逆に、天使という存在が所持していた……と言われているね。天使、そう……天使だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る