Part4


 エミリアは思い出したんだろう。

 五年前に召喚され、まだ王都に在った頃の【福音のマリス】で、一緒に住んでいた彼女たち……異世界から訪れた三人を。そして彼女たちが装備していた、宝石を。


「えっ……とぉ……」


 エミリアは申し訳無さそうに、僕を見て顔色を青くさせていた。

 これは、うん。僕に気を使っているんだろうね。アルメリアもそうだけど、僕にとって彼女たち三人は特別な存在だった。

 だけど別に、禁句というわけではないんだけどな……。


「構わないよ。エミリアの思った通り、彼女たちが所持していたのが……【聖石】だ。それを加工して装備していたんだよ、腕輪だったり帽子の装飾だったり、あれはなんていうのかな……栞?」


「エドにとって、彼女たちは大切な家族のようなもの、でしたものね……」


 脳裏に浮かんでくる、彼女たちの姿。

 いや、今はそれどころじゃない……まずはアルベールとメイリンさん、二人のことを。


「そうだね。それで、“石”の話に戻るけど」


(逸らした)

(逸らしましたね)


 姉妹は視線を合わせた。きっと次に話す内容を確認しているんだろう。


「加工した【聖石】、もしくは【魔石】は異常な魔力を発生させるんだ。こんな爪先のような小さな“石”でも、その力は絶大なんだよ……この国、以外ではね」


 僕は小指の先を二人に向け、【輝石】がどれほどの力を持つか教える。

 本来なら、騎士学校で学んでいてもおかしくない知識。だけど、この国ではそれがない。平和ボケした愚民……もし、他国でその知識を知る人物たちがいたら、きっとそう言うはずだ。


「魔力、ですか……けれどエド、その力を持った“石”をいったい誰が、どうして兄を……?」


 アルメリアもエミリアも、やはりまだ魔力という言葉にはピンとこないようだ。


「うん。高確率で、犯人は昨日の貴族……コランダムだっけ?」


 あれ、それは“石”の名前だな。なんだっけ、コラ……コラ。


「コランディルですよ、エド」


「やっぱり、コランディル・ミッシェイラ!……もしかしたらって、思ってたのよね。昨日あれだけエドにボコボコにされたのに!」


 あぁそうコランディルだ、あの貴族の人の名前。


「ボコボコにしたというか、お帰り頂いただけだよ。あと僕じゃなくてメジュアが」


「いえ、あれはエドがいてくれたから対応できたのですよ」


「そーだよ!あっ!!でもそっか、それでエドが【召喚士】だってバレたから……」


 あくまでも、あれは【従魔】であるメジュアが戦った結果だ。

 僕の召喚による戦いなのは事実だけど、実際に戦ったのは僕じゃない。それはこれからもだろう。それが、【召喚士】の戦い方なんだから。

 それにしても、エミリアは感が鋭いと言うか……あはは、良い所を突くね。

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