Part3
姉妹の姿を見た僕は、不思議そうな顔をしていたと思う。
「どうしたのさ二人共、昨日の今日で……」
しかし昨日の今日。自分で言って、その違和感に気づく。
そうか……メイリンさんの手紙の違和感は、昨日の。
「エドっ!!ちょっと聞きたいこと……って、何事!?」
エミリアは、僕たちが集まっていることに驚いていた。
そう言えば僕がこうして、宿の営業中に【従魔】たちと一緒にいることは少ないね。しかしながら、姉妹の様子を見て……僕も感じたよ。
二人が来た理由、メイリンさんの手紙の違和感……それは。
「――アルベールに何かあった?」
「「!!」」
二人は目を見開いて、僕の言葉に驚愕した。
やはりそうだ。メイリンさんが急に休みを取ったのは、アルベールが関係している。となれば……昨日のアイツ等しかいない。まったく、懲りない人たちだ。
◇
姉妹は僕の言葉を聞いて驚く。
そして僕は姉妹からその理由を聞き、納得と同時に不快感を覚える。
「……アルベールが部屋から消えた理由。門番も衛兵にも悟られず、誰にも見つからすに屋敷からいなくなった方法、ね」
冷静なアルメリアから、話を聞いた。
しかしここに来る判断をしたのはエミリア。僕に話を聞けば解決できると、そう言ってくれたらしい。なんだかむず痒いよ。
「心当たりはありますか?エド」
「心当たりというか、確実に【魔具】……“石”だと思う」
姿を消す【魔具】もあるが、それは作成する物だ。
だけど、この国では扱えるはずもない。魔力の使い方を忘れているこの国の人間では、本当にただのゴミなんだから。買ったとしても、魔力を扱えなければ無意味。
となれば、それ自体に魔力を内包し、使用者にも影響を与える【魔具】……【輝石】しかない。
「い、“石”って……昨日あたしがエドにプレゼントしたような奴?」
少し違う。昨日、エミリアが僕に贈ってくれたのは……【聖石】。
【輝石】の中でも異常な力を持つ二種類のうちの一つ。
アルベールの消息を絶ったのは、おそらく【魔石】……【聖石】とは相反する力を持つ“石”だ。
「似てるけど違う。多分、加工されて【魔具】になった物だよ」
現在、僕たちは二階の踊り場にいる。大広間も空いていたが、今日は朝から客も数組入っている。だから従業員をしてくれている【従魔】たちは仕事に戻って貰った。
「加工ですか?」
アルメリアは首を傾げる。
そうなんだよね。普通、宝石の加工と言えば装飾品だろう。しかしこの国では、宝石の価値が路傍の石と同等……貴族ですら、アクセサリーを身に着けたりはしていないんだ。
「そう、加工。【輝石】は、加工することで様々な力を発動する装飾品になるんだよ」
「あっ。もしかして……」
エミリアが何かを思い出したように、ハッと手を口に当てた。
そう……その通りさ。“石”のことでエミリアが思い出したのは、五年前にいなくなった、異世界人たちのことなんだ。
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