Part5
かつて幼少期のエドガーに召喚された、十二体の【従魔】である使い魔たちは、全て真の姿として魔物の姿で召喚されている。
エドガーの魔力を介し、この世界の情報を構築して、言葉や知識などが瞬時に理解されるらしい。その結果、人間の姿を得たという訳だ。
「あ〜むっ」
――ぱくりっ――
「え」
小石ごと、メジュアは笑顔のままエドガーの指を口に含んだ。
嬉しそうにペロペロと、飴を溶かすようにゆっくりと。
ちゅぽん――と抜け出たエドガーの指は、涎でテラテラと光っていた。
「うぅ〜〜ん、とっても美味しいですね〜〜!」
「そ、そりゃあ小石とは言え【聖石】だからね……はぁ」
自分の濡れた指をマジマジと見て、エドガーは小さくため息を吐く。
人間の姿とは言え、中身は動物を元にした魔物である【従魔】。
五年の付き合いの中で、人間としての成長はしているが、エドガーの前でだけは素を見せる。そんな朝のやり取りに眠気を吹き飛ばしつつ、エドガーは地下に向かうのだった。(指はハンカチで拭いた)
◇
一方、【王都リドチュア】にある大きな屋敷。
王城に近い場所に建てられ、その扱いでどんな家族が住んでいるか予想がつく。
そんな青い屋根の屋敷は、ロヴァルト公爵家として【王都リドチュア】では周知の事実だ。そして、その屋敷の中は……非常に騒然としている――理由は。
「――それで、兄さんは!?」
「お、居られません!……何処にもっ」
そんな早朝の屋敷内では今、長男であるアルベールの捜索がされていた。
エドガーの使い魔であるメイド以外にも、この屋敷で働く使用人は多くいる。
その人物に、長女アルメリアは怪訝な表情のまま続ける。
「深夜まではいたのですね?」
「は、はい!門番も確認しています……ご友人を送り届けてきたと言いご帰宅された後、坊っちゃんは自室へ。そこからは出ていないはずなのですが……」
しかし、メイドが朝の訪問をすると、室内はもぬけの殻だったと。
アルベールがベッドで眠った形跡もなく、室内も荒れてなかった。
「物取りではない……ですが兄さんは部屋に居らず、屋敷から出た形跡もない」
(メイリンさんを送り届けて来たのは確実として……ではどうやって外に出たの?誰かが連れて?どうやって……?)
「――アルメリア様」
「!……フィルウェイン、どうでしたか!?」
エドガーの【従魔】、メイドのフィルウェインはアルベールの専属だ。
昨日もアルベールが帰ってくるまでは仕事をしていたはず。
アルベールの部屋から出てきたフィルウェインは、アルメリアの耳元に手を当て、他のメイドに聞かれぬように答えるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます