Part5


 かつて幼少期のエドガーに召喚された、十二体の【従魔】である使い魔たちは、全て真の姿として魔物の姿で召喚されている。

 エドガーの魔力を介し、この世界の情報を構築して、言葉や知識などが瞬時に理解されるらしい。その結果、人間の姿を得たという訳だ。


「あ〜むっ」


 ――ぱくりっ――


「え」


 小石ごと、メジュアは笑顔のままエドガーの指を口に含んだ。

 嬉しそうにペロペロと、飴を溶かすようにゆっくりと。

 ちゅぽん――と抜け出たエドガーの指は、涎でテラテラと光っていた。


「うぅ〜〜ん、とっても美味しいですね〜〜!」


「そ、そりゃあ小石とは言え【聖石】だからね……はぁ」


 自分の濡れた指をマジマジと見て、エドガーは小さくため息を吐く。

 人間の姿とは言え、中身は動物を元にした魔物である【従魔】。

 五年の付き合いの中で、人間としての成長はしているが、エドガーの前でだけは素を見せる。そんな朝のやり取りに眠気を吹き飛ばしつつ、エドガーは地下に向かうのだった。(指はハンカチで拭いた)




 一方、【王都リドチュア】にある大きな屋敷。

 王城に近い場所に建てられ、その扱いでどんな家族が住んでいるか予想がつく。

 そんな青い屋根の屋敷は、ロヴァルト公爵家として【王都リドチュア】では周知の事実だ。そして、その屋敷の中は……非常に騒然としている――理由は。


「――それで、兄さんは!?」


「お、居られません!……何処にもっ」


 そんな早朝の屋敷内では今、長男であるアルベールの捜索がされていた。

 エドガーの使い魔であるメイド以外にも、この屋敷で働く使用人は多くいる。

 その人物に、長女アルメリアは怪訝な表情のまま続ける。


「深夜まではいたのですね?」


「は、はい!門番も確認しています……ご友人を送り届けてきたと言いご帰宅された後、坊っちゃんは自室へ。そこからは出ていないはずなのですが……」


 しかし、メイドが朝の訪問をすると、室内はもぬけの殻だったと。

 アルベールがベッドで眠った形跡もなく、室内も荒れてなかった。


「物取りではない……ですが兄さんは部屋に居らず、屋敷から出た形跡もない」

(メイリンさんを送り届けて来たのは確実として……ではどうやって外に出たの?誰かが連れて?どうやって……?)


「――アルメリア様」


「!……フィルウェイン、どうでしたか!?」


 エドガーの【従魔】、メイドのフィルウェインはアルベールの専属だ。

 昨日もアルベールが帰ってくるまでは仕事をしていたはず。

 アルベールの部屋から出てきたフィルウェインは、アルメリアの耳元に手を当て、他のメイドに聞かれぬように答えるのだった。

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