Part4
翌日、使い魔のホリィに起こされたエドガーは早速、“石”の入れられた箱を持って
綺麗な冷水の出る【魔具】から桶に水を入れ、顔を洗い歯を磨き、【召喚士】の一張羅である濃い緑色のコートを羽織り、欠伸をしながら宿に併設された家を歩く。
「ふぁぁ〜……結局、あまり眠れなかったなぁ」
理由は単純。エドガーは実験となる召喚が楽しみ過ぎて、プレゼントの“石”……【
その結果、部屋にある大量の【魔具】を調べて、どの組み合わせで召喚すれば最適解を引き寄せられるかを妄想していたのだ。
「紅玉。火の魔力を持つ石だし……それに合わせた【魔具】がいいと思うんだよね。昔、彼女がヒントをくれたとき、肝心なのは想像力だって言ってたし」
独り言を口にしながら、エドガーは右手に持つ本の表紙を見る。
それは、おとぎ話の図鑑だった。何種類ものおとぎ話に登場する、魔物や英雄の名を書き記した、エドガーが幼少期の頃から読み続けた本だ。
「想像か……」
既に、どんな
エドガーは、五年前に違えた人物から、知識だけは沢山授かっている。
更に、歴代の【召喚士】たちが残してきた知識が、少年の知識力を高めていた。
「えっと。本に載ってる【魔具】は……確か
「――エドガーさま〜、おはようございます〜」
「あ、メジュア。昨日は助かったよ、ありがとね」
「いいえ〜。アタシの力がお役に立ったのなら、よかったです〜」
糸目を更に糸目にして、セージグリーンの黄緑髪の女性が駆け寄ってくる。
昨夜の猛牛と同じとは思えない
「そうだ、昨日は頑張ってくれたから、メジュアには特別に……」
「はい〜?」
エドガーはコートの懐を漁る。
メジュアは首を傾げ主を見下ろす。基本的に【従魔】の方が身長が高く、エドガーは見下ろされる形に。端から見れば、知り合いのお姉さんに何かを渡したい無垢な少年の構図だ。
「はいこれ。普段の【輝石の流砂】じゃない、特別」
「わぁ〜!小さめですけど、立派な【聖石】です〜!」
エドガーが二本指で抓む小さな物は、【輝石】のうち、聖なる石として名を残した小さな【聖石】だった。
これはエドガーがこの前、【七つ木の森】の北東部、鉱山エリアの洞窟内で採掘した物である。エミリアから貰ったルビーよりも、圧倒的に質もサイズも落ちる。
それでも、いつもの流砂を凝固させた欠片よりも、何倍も
「頂いてよろしいんですか〜?」
「勿論だよ。変身までさせちゃったしね、魔力を回復しておかないと」
召喚されたメジュアは真の姿……猛牛の状態で召喚された。
呼び出すだけなら宿の中にいたのだから、叫べば「は〜い」と来ただろう。
そんなもの、戦闘場面の情緒の欠片もないのだが……。
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