Part8


 誤魔化すエドガーは、笑顔を三人に向ける。


「あはは。まぁいいじゃないか、でもこれで……僕の戦い方というか、召喚のことも本当だってわかってくれただろう?」


 今まで何度も説明していた、召喚の本来の力と、エドガーの【召喚士】としての戦い方。信じてくれていないのは感じていたが、現実を見てようやく納得してくれる。


「そ、そうですね……すみません、今まで。ですがこれで、わたくしたちがこれから王家の方々に対する報告が、難しくなりました……」


「うん。あたしもごめん、てっきりエドは変なことばかり言ってるのかと。だって昔から、変な格好してたし……ほら、コートの裏にあるその鎖。格好つけて付けてるんだと思ってたよ」


「でも、召喚は今まで何度か見せてもらってたけど、剣とか槍とかさ……なんて言うんだ、無機物?だったじゃないか。つーかメジュアがあんな姿、牛の……魔物?でいいのか?」


 三人はエドガーを囲んだまま、それぞれ聞きたいことを投げかけてくる。


「うん。本当は、召喚を何度も見せる機会はあったんだ。でもそれはしなかった……いや、できなかったが正しいかな。【従魔】を召喚してみせるのが最も早い証明方法だったけど、中々ね」


 新しい【従魔】の召喚は、エドガーも何度か試していた。

 しかしそれは無意味に終わる。追加の【従魔】は、十二体以上は召喚できなかったからだ。


「僕が趣味で集めている【魔具】だって、皆はゴミだって思ってるだろうけど……アレ、召喚の触媒なんだからね?」


「「え゙っ」」

「あー……なるほど、それで集めていたのですね」


 川での溝浚どぶさらいでさえ、エドガーにとっての【魔具】探し。

 それに、【輝石の流砂】は【従魔】たちの魔力回復の餌でもあるのだ。


「慣れてるからいいけどさ、僕は僕で大変だった。というかさ、宿の施設は……彼女が残した異世界の叡智だってのに……違和感を持たなかったの?」


「あっ」

「マジかよ」

「あー!そっかノイ――んんんっ!?」


 驚く兄妹、エミリアは誰かの名を口にしようとした。しかし後ろから、いつの間にか宿から出てきたフィルウェインに押さえられた。どうやら彼女たちの誰かの名前らしい。つまりはエドガーにとっての禁句。


「フィルウェイン。もういいよ、僕も……新しく進むと決めたんだ。エミリアに貰った、あの“石”のおかげでそれが叶う。最高の誕生日だよ、今日は」


「ぷはっ!え、いいの?昔から、いなくなったあの人たちのことは言うなって、【従魔】の子たちがいうからさー」


「わ、わたくしもそう思っていましたけど……」


「だな。随分とよくしてくれたし、あの人たち」


 三人も勿論覚えている。

 しかし兄妹が受けていた説明は……その三人は【従魔】と同じく、先代の知り合い。そう知らされていたのだった。

 誰もが知る由もなかった事実……それは。

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