Part7


 キラーーン。そんな擬音が鳴っていそうな【聖騎士】への一撃。

 空高く舞い上がったコランディルを受け止めようと、【従騎士】の二人はあたふたと走り、移動を始める。


「コランディル様ーー!」


「お、覚えておきなさいよっ、【召喚士】ぃぃ!」


 捨て台詞を叫びながら、三人の姿は【福音のマリス】から消えていった。


「あの調子だと、落下地点は南の森の中だね……あーあ。でも入り口に近いし、いいか!」


『モー、モー♡』


「あーはいはい、メジュアはよくやったよ。ありがとね」


 猛牛は魔力を凝縮させてドンドン小さくなる。

 発光で変身の姿は見えないが、やがて人の形となり、なんと見事な胸部を誇るウェイトレス、メジュアとなった。


「――エドガーさま〜、褒めてください〜」


 セージグリーンの髪の毛をサラサラと風に流し、糸目をアーチのように曲げて、全裸のメジュアはエドガーに擦り寄った。先ほどの牛の姿と同じ行動だが、そうはさせまいと、宿の中から他の【従魔】が駆けつけた。


「はいは〜い、メジュアは服を着ましょうね?」


「ズルい」


 出てきたのはホリィとウェンディーナ。

 サッ――とメジュアにウェイトレス服を着せ、そのまま中へ連れ去る。


「あぁ〜〜〜ん、エドガーさま〜〜」


「お、お疲れさまー。あ、後で【輝石】の欠片あげるからね、あはは……」


「「「――エドっ!!」」」


 【従魔】の三体が宿の中へ戻ると、入れ替わりでロヴァルト家の三人が出てきた。

 アルベールは最初から外にいたが、合わせたように同時に。


「わっ――と、ごめんね三人共、折角パーティーを開いてくれたのに、まったく厄介な客だったよ」


「なんでエドが謝るんだよ!謝るのは俺の方だっての!すまんエド、俺の不注意で、宿にもメイリンにも……皆に迷惑かけた!」


「いやいや、出しゃばったのは僕だし……よいしょっ、と」


 エドガーは疲れたようにベンチに座る。

 三人はその正面に立ち、まるで逃さないと言わんばかりの立ち方でエドガーを囲んだ。


「えっと……別に隠してたわけじゃないよ?それは三人とも知っているよね?」


「それは、そうですね。以前から、エドは彼女たち……【従魔】たちのことをそう紹介していましたし、それに……五年前も」


「あ……そっか。じゃああの人たちって、もしかして……【従魔】たちの仲間だったの?」


 アルメリアとエミリアが、何かを理解したように言う。

 五年前の出来事。それはエドガーが不遇職業となるきっかけ。

 そして彼女たち……というのが、更にその過去を深く探らせるキーワードになる。


「いや、まぁ彼女たちはちょっと違って。うーん、説明しにくいから返答拒否で」


「おい」


 笑顔で拒否するエドガーに、思わずアルベールはツッコミを入れた。

 しかしエドガーとしても、五年前に道を違えた彼女たち三人・・の話はしにくかった。大切だからこその、拒否だった……。

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