Part3
笑い声が森の中に響いていた。
青年たちは一頻り笑うと、コランディルは指を指して叫ぶ。
「【召喚士】!!……【召喚士】か!貴様が、
「うふふふふっ。不遇職業がこんな森の中にいるなんて、王都にいられなくなって逃げ出したというのは、本当だったんですね、コランディル様!」
「ガハハハハッ!マジでおもしれぇ!ダサすぎだろ自分で侮蔑の象徴だと叫ぶのはよぉ!!」
部下の二人も続けて笑う。
「……あ、れ?おかしいな」
(ま、こんなものだろうね。召喚の準備も終わったし、そろそろいいかな)
エドガーは視線を巡らせ、窓から覗く視線に気付く。
どうやらエミリアもようやくこの状況に気付いたらしく、メイドのナスタージャが必死に羽交い締めをして止めているようだった。
きっとアルメリアは呆れているだろう。メイリンを落ち着かせている可能性もある。
「面白いな貴様、【召喚士】。まさかここまで愚かなガキが、不遇職業だとは。そんなクソガキが、宿の経営……噂の絶えない【七つ木の森】の主。くくく……面白いぞ、貴様」
「お褒め頂いて光栄ですよ。それで?僕が不遇職業だってわかってどうします?謝れば許してくれますか?ここまで問題を起こして、それで済むなら僕は謝りますけどね」
エドガーは鎖を持つ手の反対を上に挙げ、降参してもいいと口にする。
「――許すわけねぇだろうガキが。こちとら不遇職業はどうなっても構わわねぇっつう免罪符ができたんだ。そりゃあ……コランディル様、やるに決まってますよなぁ!」
エドガーの笑みを不敵と思わず、恐怖からの笑みだと思った【従騎士】イグナリオ。コランディルも同じだろう。
「その通りだ。王家の方々にも良い土産ができるというもの……不遜なる【召喚士】は、誉ある【聖騎士】に因縁をつけ、この俺様が成敗したと……なぁ!」
剣先をエドガーに向け、コランディルは自分の正当性を叫んだ。
関連性のある人物はアルベールだけ。【聖騎士】として、不正は許されない。
アルベールもそれが理解できているからか、悔しそうに歯噛みする。
「じゃあそういうことで。これで僕も安心して力を行使できる……」
エドガーは特に驚きもせず、コランディルの言葉に同意する。
「先ほど言いましたよね。貴方たちと戦うのは僕じゃないと……僕は僕らしく、【召喚士】として戦わせてもらいますよ」
宙に浮いた魔法陣が輝く。
会話の中でも消滅することなく、魔法陣はゆっくりと回転しながら、その大きさを徐々に拡大させていた。最大限【召喚士】に警戒しているのなら、まず真っ先にこの魔法陣を破壊するために動くだろう。ということは、コランディル・ミッシェイラ一行は一切、エドガーを脅威とは思っていないことになる。
寸前までは警戒もあった。しかし、【召喚士】と聞いた瞬間にそれはなくなったのだ。
「やってみるが良い、【不遇召喚士】。お前がなぜ聖王家から忌み嫌われ、国中から後ろ指をさされる存在になったのか……この俺様に教えてみろぉぉ!」
「いいでしょう――」
エドガーは目を細め、魔法陣を地面に移動させる。
最大級に光り輝く魔法陣は、エドガーの魔力に応じて対象を呼び出す。
――ズズズ――
「「「!?」」」
その巨大な体躯、鋼鉄の角。
大凡、野生動物には見えないその姿は……エドガーの三倍の大きさを誇る。
「さぁ行こうか、我が血に従いし【従魔】……鋼牛メジュア!」
エドガーの使い魔である、牛の【従魔】メジュア――その真の姿のお披露目を。
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