第06話『召喚の使い方、戦い方』全9Part

Part1


 【リフベイン聖王国】の王族、聖王家は三人の姉妹を中心に国営をしている。

 聖王は重い病に伏し、王妃も積極的にまつりごとには口を出さない。

 何を隠そう、五年前にエドガーを不遇職業と定めたのも、その三姉妹の一人である第一王女――セルエリス・シュナ・リフベインなのだ。


「どこまでも巫山戯ふざけたガキだ。そんな鎖でこの俺様と……【聖騎士】と戦おうと言うのか?聖王家の御旗を掲げることを許された、この由緒正しき家柄である……この俺様とぉぉっ!!」


 現在の聖王国を束ねているのは、間違いなくセルエリス・シュナ・リフベインだ。

 四大公爵家と呼ばれる四家のうち、この貴族の青年……コランディル・ミッシェイラの家。彼のミッシェイラ家も、その第一王女に忠誠を誓う家だ。

 そしてアルベールやアルメリア、エミリアの家であるロヴァルト家も……その四つに数えられている。だからこそ、コランディルが怒る正当な理由にもなってしまっているのだ。


「おかしいですか?」

(この人が……あの王女様に仕えているのか。正直、そうは思えないな)


 コランディルも【従騎士】二人も、大口を開けてエドガーを笑っている。

 夜の森に響くほどに、その嘲笑は人の機微に影響を与えた。

 普通なら笑われ腹も立つだろう。プライドが傷つけられ、泣きたくもなる。しかしエドガーはその嘲笑を完全に無視し、チェーンアクセサリーを振り始める。


 ――ヒュンヒュンヒュン――


「くくくっ……そんな玩具のような鎖で、この【名剣バーディア】と渡り合えると?本気で言っているのなら、とんだお笑い草だ。貴様もアルベール・ロヴァルトも、その端女も、下らないお遊びで身を滅ぼせば良い!!」


 ――ヒュンヒュンヒュン――


「!?」


 ヒュンヒュンと振り回される鎖は遠心力を増し、コランディルからは円形状の盾にでも見えたはずだ。その様子はアルベールたちからは見えず、コランディルから発せられる警戒心を逆に不穏に感じただろう。


「――兄さん!今のうちに、メイリンさんを」


「!……ア、アルメリア。わかった、メイリン!」


「は、はいっ」


 食堂側の窓が開き、妹のアルメリアが手を伸ばして来た。

 アルベールはメイリンを隠すように自分の背で押し、コランディルたちの視界に映らないように行動する。

 しれっと窓際に到達すると、アルベールは。


「すまんアルメリア、厄介を起こした!」


「存じてます。仕方ないでしょう、まずはメイリンさんを。こちらへっ」


「は、はい!」


 手を伸ばし、メイリンは不安そうにしながらもそれを掴む。

 グッ――と引き込み、メイリンを宿の中へ退避させた。

 中では「え、え?何があったの!?」と状況がわかっていない妹の声が響いていた……。

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