Part6
おそらく今後、アルベールは貴族としても咎められ、強制的にメイリンと別れさせられる可能性もある事案だ。
それを自覚しながらも、アルベールは油断を見せて、夜の宿の外で目撃される。
いくら睨みを利かせても、コランディルはもう立場が上だと判断している。憎々しさといやらしい笑みの中間で揺れ……しかし尚、アルベールを蔑視する言葉を投げる。
「残念だよアルベール。四大公爵家の一端でありながら、そんな能無しの
その言葉に、アルベールの感情は起伏を始める。
家族やメイリンを侮辱された、それもある。しかしそれだけではない。
「――訂正しろコランディル!彼女だけじゃない、この王都……いや、聖王国の国民全てに対してだ!」
貴族として、決して民を
それはアルベールが、父アーノルド・ロヴァルト公爵に教えられた、心に刻むべき言葉。聖王家の三人の王女もきっと同じだと、それが聖王国の理念なのだと。
例えそんな人物たちが、一人の少年を不遇職業などという枠組みに入れているという事実を理解していても、だ。
「俺だけならまだしも、聖王国の民を侮辱するのは貴族として看過できない!」
「お前が言うなぁ!!そもそも、お前がそんなクソ女に騙され、貴族としての責務を放棄するような選択をしたのが原因だろうが!俺様はそれを……それをぉ!」
「クソ女だと……もう一度言ってみろ!!コランディル・ミッシェイラ!!」
決して殴り掛かるような真似はしないが、アルベールの憤慨メーターも限界だった。最愛の女性との関係を知られたのは自分の落ち度、それは理解している。
しかしそれだけではなく、国民全てを蔑ろにしたような発言を引き金に、アルベールの怒りは一気に加速した。
平民……それはメイリンも、そして幼馴染エドガーも同じなのだから。
「何度でも言ってやるぞアルベール!その女はクソだ!端女だ!お前を惑わす害悪なんだよ!!平民など……全てなぁ!!」
「――貴様ぁぁぁ!」
言葉の応酬は、貴族の華やかさなど無縁のものだった。
たったの一言、平民を侮辱した言葉のやり取りだけ。
しかしそんな喧嘩に割って入るように……その言葉が投げられる。
「――悪いんですけど、喧嘩なら森の外でやってくれませんか?」
「「!!」」
その気の抜けた言葉は、宿の入口から発せられた。
アルベール側とコランディル側の間に入り込むようにゆっくりと歩き、横目でアルベールを見る少年。
本日の主役、誕生日を迎えたばかりの【召喚士】……エドガー・レオマリスだった。
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