第05話『因縁はどこから来るかわからない』全9Part
Part1
エドガー・レオマリスの誕生会が始まり、半貸し切り状態の【福音のマリス】も、賑やかな光が窓から漏れていた。
沢山の祝いの声に笑い声、時折怒号も飛んでいるが……それ等は基本的に楽しいものと分類できた。温かい空気感に、誕生日を迎えた少年は無意識に笑顔になり、つい数日間の忙殺を忘れさせるくらいには、楽しんでいるようだ。
しかしプレゼントで贈られた、“石”の出どころに感じた一瞬の疑念も同時に、忘れてしまっている。
「――エドガー様。こちら、我々【従魔】一同からのプレゼントになります」
「え……」
食事をするエドガーの傍に立ったのは、ロヴァルト家に奉公に行っている【従魔】の一人、名はフィルウェイン。シルバーアッシュの銀髪をポニーテールにした気品のある佇まいの女性で、竜の【従魔】。ロヴァルト家ではアルベールの専属メイドとして働いている。
「どうなさりましたか?」
「い、いや……嬉しいよ。ありがとう」
エドガーの戸惑いは、どこから金が出たのか……という点だった。
メイドとして働く三人はともかく、他の九体には金銭という報酬がない。
彼女たちは魔力を餌とし、基本的にはエドガーが作った【輝石の流砂】を固めた結晶・欠片を食しエネルギーにしているからだ。
そしてその金銭問題の疑問も、その物を見て納得する品物だった。
「ご安心ください。エドガー様に誓って、悪事は働いておりません。それは、我々【従魔】それぞれの魔力結晶ですので」
「それは当然ね?でも、そっか……君たちが僕に。魔力結晶なんて、時間かかっただろう?」
【従魔】一同からのプレゼントは、スティックケースに入れられた何かだった。
蓋を開けると、そこにはシンプルな十二本の棒状の何かが。
「はい。あのとき、それが間に合っていればと……悔みに悔やみましたので」
フィルウェインの言葉は、五年前の事件のことだ。
自分たちがいれば、もしくはこのプレゼントが間に合えばあるいは……という思いなのだろう。それはエドガーも考えていたことだが、まさか【従魔】たち自ら行動するとは。正直エドガーは予想外だった。
「これは……?」
「はい。それは、私たち【従魔】の力を凝固させた、【魔具】になります」
棒状のそれは、十二本それぞれ色が違い、先が削れる仕様になっていた(チョークのような)。
「なるほど。魔力を先端に込めて、何かを書くんだね?使えば削れて消耗される感じか」
「はい。魔力を注げば、地面でも空中でも書くことが可能です。我々の名前を書くだけで構いません、それだけで、多少劣化しますが【従魔】の力を行使できるようになります」
【従魔】の力。それは、戦闘での使用……という意味だった。
エドガーも、十二体の本職が戦闘員だと理解している。
だからこそ、備えて欲しいという彼女たちの思いも理解できる。
「助かるよ。基本、僕は後方支援職だからね……
「はい、来ないに越したことはありません。我々は常にエドガー様をお守りすることが使命ですが、全員がその場にいるとも限りません。あのときも……そうでしたから」
「……そう、だね」
それは先ほども述べた、五年前の後悔。
もし、あのとき十二体の使い魔があの場にいればという、そんな思いだった……。
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