Part9


 赤い宝石、深紅に燃える炎のような赤き紅玉。

 当然エドガーが知らないわけはなく、今まさに探し求めていた、【輝石】の一種だった。


「これは……まさか、まさか!!」


 それは待望だった。

 なにもたったの数日探し求めていたわけではない。

 エドガーが五年以上、いやそれ以上前から探し求めていた……赤い宝石なのだ。地下にある姉妹石・・・たちと同等の……力の結晶。異世界召喚への、最後のピース。


 それがこの……。


「――【消えない種火の紅玉インフェルノルビー】」


 歓喜だった。涙が出そうなレベルの感動が、エドガーの心を動かす。

 震える手をそっと伸ばし、その赤い宝石を恐る恐る手に取る。


「ど、どうかなエド。あたし――」


 確認し、ルビーを元の箱に戻すと。


「エミリアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 ――ガバッ――


「え。ひゃぁぁぁぁぁぁっ!!エ、エドォォ!?」


 余りの喜びに、エドガーはエミリアに抱きついた。

 愛しい者を抱き寄せるように、ギュッと力を込めて、エミリアの身体を強く。


「エ、エド……エミリアのプレゼントに、まさかそこまで喜ぶとは」


 ガックリと肩を落とすアルメリア。

 アルベールはしたり顔で妹二人を見る。そのタイミングで、最後の料理も到着した。


「さぁさ、これで料理も全部です。エドガーくんも、そろそろエミリアちゃんから離れてくださいね。それ以上は、その“石”の色みたいに燃えちゃうわよ?」


 メイリンが困り笑顔でエドガーに言う。

 エドガーはようやく正気に戻り、「はっ!!」と小さく声を出してエミリアから離れた。


「ご、ごめんエミリア。嬉しすぎて、つい……」


「……ぃ、ぃぇ」


「声小せぇよエミリア、ははははっ」


 赤面で硬直し、ギギギ……と鈍く動いて着席するエミリア。

 エドガーは「しまった……」と反省しながらも、箱を再度確認。

 宿のランプで照らされる赤い宝石、ルビーは確かにそこに存在し、夢ではないとエドガーに向けて、光り輝いていた。


(でもこの“石”、エミリアはどこで……そんな簡単に見つかるような物じゃ――)


「エド、本日の主役の挨拶をお願いしますね」


 アルメリアがエドガーに笑いかけ、エドガーはコップを持ち。


「え、あ。うん……皆、本当にありがとう!この“石”は勿論嬉しいけど、二人からのプレゼントだって本当に嬉しいよ!それに、【従魔】の皆もさ……セリーやミュン、ファイの情報収集組、それとティニーにココ、ヨルの旅人組、ここにはいない彼女たちの分も、今日は存分に楽しんで!」

(まずはいいか……折角、三人が祝ってくれるんだ……)


「「「「「「はい!エドガー様!!」」」」」」


 従業員組、メイド組の六体は主人の言葉に返事をし。


「それじゃあ……乾杯!!」


 本日の主役エドガーのコップが高く掲げられ、喜ばしい誕生会が始まった。

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