Part3
既にプレゼントを決めていた姉に対し、妹のエミリアは頬を膨らます。
「むーーー。いいもんいいもん、あたしだって、すっごいプレゼントを用意しちゃうから!!」
気合を入れるエミリア。
薄い胸をトンッ――と叩いて、エドガーが最も喜びそうな品を探すと決めた。
「……んじゃ、俺は剣でも贈るかなー」
「エドは剣なんて絶対に喜ばないって……」
「うーん。喜ぶ姿は想像できませんよ、兄さん」
妹二人に全否定される兄。しかしアルベールとて、幼馴染の少年と共に遊んだ記憶がある。そのときには、確かに木剣を持って冒険の真似事をしたものだ。
それこそおとぎ話の英雄譚のように、自分が勇者だと思い込んだ少年の記憶である。
「いいだろ別に。アルメリアが言ったんだ、気持ちだろ気持ち!これが俺の気・持・ち、なんだよ!」
「まぁ別にいいけどね」
「まぁ、兄さんがよろしいなら」
このような感じで、三兄妹による“幼馴染誕生プレゼント会議”は終了した。
◇
翌日、次女エミリアは一人、【王都リドチュア】の商店街をウロチョロしていた。
「ちっ」
初っ端から舌打ちをし、店を出たエミリア。
お目当ての商品が見当たらず、不機嫌な態度を取ってしまった。
本来なら良客であり、お金も落とす最上級貴族……それが、好いた男が関わると途端にこれだ。店主にも勘弁してあげて欲しい。
「あぁーあ、でもどうしよっかなぁ……昨日姉さんも言ってたけど、やっぱり……」
エミリアが視線を移したのは、路地裏だった。
ここは貴族街ではあるが、商店の裏側……簡単に言うと
ゴミ拾いで有名(悪名)なエドガーなら、問答無用で入っていくだろう。しかしエミリアはこれでも貴族……
「ゴミが良いのかなぁ……エド」
腕組みをしても乗らない胸の内を、そのまま口にする。
一般人が言うゴミは、エドガーにとっての【魔具】。一番喜びそうと言えば、その通りだった。しかし何度説明されても、エミリアにもアルメリアにも、勿論兄のアルベールにも、エドガーの趣味だけは理解できない。
どう見てもなんの役にも立たないゴミを集め、それを宝のように目を輝かせる幼馴染。彼が少しおかしいのだと、そういう認識で関わってきた彼女たちだが、それを覆すほどの関係性が構築できていることだけが、幸いだろう。
「無難に鞄とか?服もいいけど……エドはいっつもあのコートだしなぁ」
エドガー云わく、そのコートは【召喚士】の一張羅だそうだ。
ボロくはないが、別段新品でもない。どちらかと言えば年季の入ったヴィンテージに近い。服を購入して贈ったとしても、着てくれない未来しか見えなかった。
「はぁぁぁー……」
エミリアは、今日は諦めて帰ることにするのだった。
◇
路地裏の影、そこからカナリーイエローの金髪の少女を見る人影がいた。
「へぇ、あの娘か……」
肩をガックリと落とし、トボトボと貴族街の方角へ足を向ける少女に、その人物は声をかけることにした。
「――お嬢さんお嬢さん」
「!!……えっ、え?」
小さな背丈の少女を見据えた瞬間、その男とも女とも取れる声音の人物は、深く……フードを被り直した。
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