第04話『ロヴァルト家の三兄妹』全9Part

Part1


 目的の物が見つからずに四苦八苦するエドガーを尻目に。

 【王都リドチュア】の貴族が住まう区画にある、レンガ造りの豪邸、ロヴァルト公爵家の屋敷……そのリビングでは、三人の兄妹が作戦会議を開いていた。


「――それじゃあ意味ないじゃん!」


 大きな声を上げる妹に、長女アルメリアがたしなめる。


「エミリア、声が大きいです。もう少しお静かになさい」


 ロヴァルト家の次女エミリア・ロヴァルト。

 彼女が憤る相手は、シャインゴールドの金髪を首元で結び、ダルそうに妹の言葉を聞く青年。ロヴァルト家の長男、アルベールにだった。


「るっせぇ〜。マジで声デカいなエミリア……お兄ちゃんは耳が壊れそうだよ」


 両耳に指を差し、爽やかな顔を歪めて低身長の妹を見る。

 高身長かつスマートな体躯の青年は、顔までスマートだった。


「兄さんが真面目に考えないからでしょ!!」


「「だから!!声!!」」


 それぞれ毛色の違う金髪の三兄妹は、屋敷のリビングで会話……いや会議をしていた。来たる数日後、三人の幼馴染である、エドガー・レオマリスへの誕生プレゼントの詳細を。


「ご、ごめんなさい……」


 流石に、兄と姉に睨まれて怯む末妹。

 ゆっくりとソファーに座り直して、頬を膨らませるエミリア。

 最愛の幼馴染の誕生日、兄が真面目に考えていないと思い、腹が立ったのだ。


「俺だってエドの誕生日は祝いたいさ。けど、最近はスィーティア様も厳しくてな?忙しいんだよ、【聖騎士】はさぁ」


 アルベールは、アルメリアと同じく【聖騎士】だ。しかも【リフベイン聖王国】の第二王女、スィーティア・リィル・リフベインの直属の配下でもある。

 彼女は王女でありながら武芸にも秀でており、【聖騎士】の訓練にも参加していた。それに付き合っているのだ、アルベールは。


「それをあたしに言われても……だって【従騎士】は同じ訓練に参加できないしぃっ!!」


 ――ツーン――


(ヤベッ、藪蛇……)


(兄さん……)


 【聖騎士】の下部組織である【従騎士】は、今エミリアが言ったように扱いが違う。同じ訓練は受けられないし、給金だって違う。同じ国に所属する騎士でも、まったく比べられないほどに違っていた。


「それより!姉さんも兄さんも、エドへのプレゼントはどうするの!?」


「そ、そういうエミリアはどうなのですか?」


「そ、そうだぞエミリア。俺等に言う前に、お前はどうなんだよ」


「……そ、それは〜。まだ、だけどさ〜?」


 後頭部に手を当て、「でへへ」と笑うエミリア。実は彼女も、まだプレゼントを決めたわけではなかった。

 理由は単純。二人の兄姉と内容が被りたくなかったからだ。同じプレゼントとなってしまっては、兄と姉の方が優遇されるに決まっている。だから被りたくない。

 末っ子の劣等感と、幼馴染に一番に喜んで貰いたいという思いが、そうさせたのだろう……。

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