Part8
エドガーの決意は固まった。
異世界召喚をし、人員を確保する。まずは目先の戦力増強、使い魔のようの存在でありながら全く違う存在、かつての仲間たちと同じ存在……異世界人を招くために。
「よしっ!!まずは
意気揚々と、エドガーは自室で拳を上げる。
五年間、この前向きな性格のおかげでへこたれることはなかった。
そのポジティブシンキングは、不遇職業と定められたときから目覚めた、ある種の特殊能力と言っても過言ではないだろう。
自分を守るため、あの事件が、彼女たちの
◇
その日の夜、営業の終了した【福音のマリス】の大浴場。そこにエドガーはいた。
「はぁ〜〜〜〜ぁ」
今日の宿泊客は少なかった。
通常の部屋に三組、計七人の旅行客だけだ。
食事も入浴も済んでいるから、今はもうエドガーたち【福音のマリス】の面々が利用できる時間だ。その後は、最後に利用した誰かが掃除をするわけだ(基本、使い魔が複数)。
「この浴場と、
王都では綺麗な水場は少なく、この【七つ木の森】から更に離れた【ルド川】から水を汲み、そして運んで使用するというのが主流だ。だから入浴などに水を使う余裕もなく、この【福音のマリス】だけが特別だと、王都の人間は知っているはずだ。
「五年経っても、僕は忘れられないまま……『前に進んでください』って、そう言われたんだけどね……」
タオルを顔に乗せ、エドガーは天を仰ぐ。
ぴちょんと水滴が湯船に落ち、思い出される過去の記憶。
「
彼女たち……三人の異世界人は、エドガーのもとを離れた。それが事実。
十歳の少年を主と呼び、絶大なる力で世界を支配することも可能だったであろう、その人物たち。しかし五年前、その中の一人が暴走をした。その結果、起きたのは王都が崩壊に追い込まれる寸前の大惨事。死者は百人程度で済んだが、下手をすれば王族も死んでいただろう。
「彼女たちが僕を捨てていなくなったのは、僕が弱かったから。異世界人の実力に見合う強さがなかったから、暴走を抑え込む抑止力にもならなかったから……」
その後悔は一生拭えないと、エドガーは思っていた。
しかし自分が強くなれば……魔力を含む、自分だけの力である召喚を極めれば。
――ジャバッ!!――
「行動は早いほうが良い。従業員を増やすという名目のもと……僕は、召喚を!」
風呂でリフレッシュし、エドガーは次の日からまた
しかし、そう簡単に求める【輝石】は見つからない。ましてや求めるのは小さな“石”ではなく、本来金貨百枚でも買えないレベルの宝石。ただの溝浚いで見つかるほど、甘くはなかった……。
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