Part5
ウェイトレス服のエミリアを褒め(雑に)、エドガーはエミリアたちの本職の状況を問う。
「それで、宿はエミリアとアルメリアが手伝ってくれてたんだろうけど……いいのかい?客の中には王都の民も大勢いたはずだけど」
「あーうん。基本的に酔っ払いだし、まさか【聖騎士】様がこんな場所で働いているとは思わないんじゃない?」
(こんな場所って……いや事実だけどさ)
悪気のない一言だが、しかし正論だ。国の最大戦力である【聖騎士】が、森の奥の宿屋にいるわけがない。エドガーも理解しているし、なんなら従業員のメイリンも使い魔たちも、幼馴染も同じ見解だ。
「確かにね。二人が良いなら構わないけど、身バレには気をつけるんだよ?」
アルメリアと、その兄アルベールは揃って【聖騎士】だ。
エミリアもその下部組織である【従騎士】とはいえ、国に仕えるのは同じ。聖王家から直々に不遇職業と名指しされたエドガーのもとで働いたとなると、問題になる。
ましてやロヴァルト家の兄妹は、エドガーの監視を言いつけられているのだから。
アルメリアなら、そうならないように根回しも作戦もあるだろうが、エドガーからすればエミリアだけは心配だ。年上の幼馴染たちだが、エドガーは年齢の割に聡い。
「わかってるよもー。エドは心配性だなぁ、昔っからだけどさ」
「だろう?慣れてるなら、本当に慎重にね。僕は【召喚士】として王城へ行くこともある……そのときに聞かれるんだよ、三人のことをさ」
「え、そうなの!?」
エドガーは着替え終わると椅子に座る。
「よいしょっ」、と年寄りじみた掛け声で。
「おじさんくさいわね……」
「
なら止めたらいいのに、とは言わないエミリア。
無駄だとわかっているからか、それとも反論してくるからか。
そこはかとなく、後者の可能性があるとエミリアは思っている。
「それでエド、エドはこれからどうするの?ご飯は?」
「まだだよ。食事は後で頂くけど、予定は特にないかな。まぁいつも通りさ」
基本的に、経営者であるエドガーは口も手も出さなかった。
放任主義と言うか、矢面に立つのが嫌なのか、もしくは両方か。
「でしょうねー、知ってた。あははっ」
「なら聞かないでくれない?あ。そう言えばエミリア、仕事の給金だけどさ」
「いやいや、貰わないって!あたしも姉さんも好きで手伝ってるんだし……お金、ないでしょ?仕事も
その制限とは、国から決定された不遇職業……【召喚士】の対応だった。
【召喚士】は、聖王国内の施設を利用できない。
【召喚士】は、聖王国内での支払い金額が五割増となる。
【召喚士】は、聖王国内で自分の職業以外では働いてはならない。
などという意味不明な制限が五年前に設けられ、それ以降は逃げるように、エドガーは【王都リドチュア】からこの【七つ木の森】に移り住み、隠遁生活をしているのだ。
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