Part3


 エドガーは幼馴染の疑問に対し、まるで師事をするかのように、人差し指を天に向けて語る。


「まぁそうだね。確かに彼女たち【従魔】は僕の使い魔であって、宿の従業員にしたよ。たった一人……宿が王都にあったときからそのまま働いてくれている、メイリンさんに負担を掛けないためにね。彼女たちは、僕が召喚・・した存在だから、僕の言葉は絶対だしさ。だから彼女たちは、基本的に僕に忠実だ。それはエミリアも、五年前から見て来てるだろう?」


「だからって無理難題を押し付けてるんじゃないのー?」


 そんなつもりはないと、エドガーは目を細める。

 しかし若干の心当たりがあるのが痛いところだ。

 下手に否定できないのが、エドガーの正直な性格を表している。


「まぁ、本人たちがいいって言ってるし。宿の従業員にしたのが三体、聖王国内で情報収集させているのが三体、国外で自由にさせているのが三体、でもって……」


 エドガーは再度視線をエミリアに向ける。

 髪を拭き終えたエミリアは、その言葉に答えるようにして。


「そうね。助かってる、正直……あたしの家、ロヴァルト家にメイドとして奉公に来ているのが三人……いや、三体?でいいの?本当に?」


 その心配そうな配慮は、エミリアの家であるロヴァルト家で働くメイドたちに向けたものだ。公爵貴族であるロヴァルト家に、エドガーの使い魔である三体がいる。

 先に言った従業員が三体、聖王国内に三体、国外に三体、そしてロヴァルト家に三体。計十二体の【従魔】が、エドガーの召喚によるものだ。


「うん。それが正解らしいよ。彼女たちもそれで構わないだろうし、本来の姿は……魔物・・だからね。人間扱いしても怒るから、少し面倒だよ……あははっ」


 笑いながらも、その視線はエミリアを怯えさせようとした悪戯心だった。

 普通、魔物と言われれば恐怖心も懐疑心も抱く言葉だ。

 しかしエミリアは三度みたび、呆れたように目を細めてエドガーに言う。


「まーたそんなことを言って。皆女の子なんだよ?そんなこと言われたら傷付いちゃうじゃん。それに魔物なんて、おとぎ話・・・・の伝説じゃない。エドは昔から、魔法とか魔物とか、絵本の物語りが事実だったとか……ねぇ?少し考えれば、わかるでしょ?もういい加減に、諦めたらいいのに」


 エミリアは何気ない口調で、エドガーの言葉を流している。

 無駄なことを何年も続けているうちに中年になってしまった大人を諭すような口振りだった。


「はははっ……うん、そうだね。そうだった」


 わかっていた。そんな顔でフッ――と笑うエドガー。

 エドガーのことをいくら大切に思う幼馴染でも、その言葉を幼馴染たちが信じることはなかった。それがこの国の、この世界の当たり前であり、当然の事実。

 的外れを述べているのはエドガーの方であり、【不遇召喚士】エドガーの……戯言なのだから。

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