2回目の今日

 騒々しいアラームで起き上がる。

 さて、支度して大学に行くか。


 いつも通り1時間弱満員電車に揺られ、大学に到着する。

「おはよ。どうした。今日はいつも以上にやつれてるんじゃないか。」

「うるせぇ。やつれてねぇわ。」

 ん?この会話昨日したような。

「なぁ、友介。この会話昨日しなかったか?」

「何言ってるんだ大地。昨日は俺ら会ってないし、今日だって今会ったばっかだろ。やっぱり、お前おかしいぞ。今日だって、1限ないのに早くきて。寝不足か?」

「いや、昨日はしっかり寝たはず。」

「あっ、大地さん、友介さん。おはようございます。」

「おっ、遙じゃねぇか!おはよ。」

「ふふふ、いつも通り友介さんは元気ですね。」

 …やっぱりおかしい。昨日遙に会ってこの会話をした気がする。

「なぁ、遙。この会話昨日しなかったか?」

「えっ?突然なんですか?昨日は、私授業なくて一日中家にいましたけど…」

「そ、そうか。」

「そんなことより、カフェテリア行きませんか?久々に3人でお茶したいです。」

「ごめん!遙。俺1限から授業あるんだよ。また誘ってな。」

「そうですか。じゃあ、大地さんどうですか?」

 カフェテリア行く流れも昨日したよな。

 てか、上目遣いで俺を見るな…!くっそ、

「いいよ。時間間違えてやることもないし付き合うよ。」

「やった!じゃあ行きましょう!」


 この可愛らしいカフェテリアに来るのも昨日ぶりか。

「……なぁ、今日って何日だ?」

「今日は、8月27日ですよ?」

「え。」

「どうされました?」

「あ、いや、なんでもない。」

 おかしい、明らかに、昨日は確か27日だったはずだ。

 まさか、2回目?いやそんなはずは……

「やっぱり、調子悪いですか?今日、ずっと思い詰めた顔していらっしゃいますよ?」

「すまん。ちょっと、人混みにやられたかもしれない。外の空気吸ってくる。」

「そ、そうですか…お気をつけて。」

 気を悪くさせたかな。まぁ、いいか。頭を冷やしたいのはそうだし。


「あー!大地くーん!」

 あいつは!

「大地くんだ!やっと会えた!」

「彼方…。」

「えっ、なんで私の名前知ってんの?」

「あっ、いや、なんでもない。」

「まぁいいや!行こ!」

 そう言うと彼方は俺の手を掴んで、駆け出した。


 校内を一周回り門の前まで戻ってくる。

 案内しながら回っていたが、どうも彼方の口調が子供のようだった。

「なぁ、彼方。お前って歳いくつなんだ?」

「乙女にそれ聞くのー?秘密だよ。秘密。」

「どこで、そんな言葉を覚えてきたんだ…」

「今日はありがと!学校案内楽しかった!じゃあね!」

「楽しんでもらえたならよかったよ。じゃあな。」

 手を大きく振って彼女は去っていった。満面の笑みを浮かべて。

 昨日起きたはずだった惨劇はこれで回避できたはずだ。

 これで大丈夫なはず。


「はぁー。今日も疲れたな。友介に勧められて飲みすぎてしまった…」

 ふと、点けたニュース番組の報道に目を疑った。

 煌々と燃える炎。その中には白い髪のあの少女が。

「か、彼方…!」

 昼間あんなに元気だった少女がこんな事件に巻き込まれるなんて。

 別れ際のあの満面の笑みが脳裏に張り付いて離れない。

 くっそ。また、俺は間違えたのか。

 あの時、もう少し引き留めていたら。

 明日また、今日に戻っていないかな。

 そんなこと、ないか。

 今日は眠れそうもない。

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