夕焼け空の彼方

@aoikun45439643

始まり

「ねぇ、私を救ってくれる?」


「うわぁあ」

 どこか聞き覚えがある声で飛び起きた。もう朝か。ただの夢の話だ。さっさと支度して、大学に行こう。


 いつの通り、満員電車に揺られ1時間弱。やっと着いた。

「おはよ。どうした。今日はいつも以上にやつれてるんじゃないか?」

「うるせぇ。やつれてねぇわ。」

 隣でうるさいこいつは、中学の時からの知り合いの逢田友介。いくら縁を切ろうとしても付いてくる腐れ縁ってやつだ。

「ってか、大地お前1限無いんじゃなかったっけ。」

「あ。そうだったわ。何寝ぼけてるんだろ。」

「はははっ。しっかりしてるお前が珍しいな。明日槍でも降るんじゃないか。」

「うるせぇ。黙れ。」

 くそ。1限無いんだった。あの朝見た変な夢のせいだ。2限目まで何して過ごそうか。

「あっ、大地さん。おはようございます。」

「遥。おはよう。」

「今日は早いのですね。何か用でもあったんですか。」

「いやぁ、時間間違えちゃってさ。」

「そうだったんですね。この後、お暇でしたらカフェテリアでお茶でもいかがですか。」

「あぁ…いいよ。やることもないし行こうか。」


 俺が通っている大学には、めっちゃオシャレなカフェテリアがある。そのオシャレさから、女学生しかいないのだけれど。

「なぁ、暇だから来たけど、やっぱり俺浮いてないか。」

「そうでしょうか。最近では、かわいいものが好きな男性も増えていていますよ。だから、大丈夫です。」

「そうゆう問題じゃないんだけどな…」

 サークルにも所属してないし、行く当てないからな、仕方ない。

 2限が始まるまで、遥と喋っていた。遙はお茶会だ。とはしゃいでいたけれど、

「もうそろそろ、2限の時間ではないですか。楽しかったです。またお茶しましょう。」

「あぁ、ありがとな、付き合ってくれて。」

「いえいえ。では、また。」

 遙と別れを告げ、2限の教室へ向かう。


「ねぇ、あの子。」

 なんだ、教室が騒がしいな。

 覗いてみるとそこには、小学生くらいの背丈の少女が立っていた。この大学の生徒か?見かけたことないが。

「あっ、大地くん。おーい。」

 えっ、誰だ。俺知らないぞ。

 謎の少女は俺に向かって駆け寄ってくる。

「お、おい、お前誰だよ。」

「えー、覚えててくれてないの。私だよ私。彼方。覚えてない?」

 そう言うと、少女は俺に抱きついてきた。

「お、おい、何するんだよ。色んな人が見てるんだぞ。」

「えー、いいじゃん!私たちそうゆう仲じゃん!」

「はぁ?お前のこと俺は知らないんだって!」

 俺は少女のことを突き放した。

「いったぁ!何すんの!」

 俺は一旦その場から立ち去った。少々気が引けたが。


 一体なんだったんだ。あの子は。

 せっかく受けようとした2限が受けられなくなってしまった。

 まぁ、いいか。嫌いな教科だったし、いいサボる口実になった。

 とはいえ、また暇つぶししなければいけなくなってしまった。

 さて、何しようか。

 って、なんだあれは。


 目を向けたその先には、この世のものとは思えないほどの残酷な光景が広がっていた。

「な、なんなんだ、あれは。」

 真新しい血痕と凶器と思われるものたち。

 その中には、さっき見たあの少女が――

「助けて……」

 はぁ?

 瞬きをした瞬間に、彼女は消えた。先程までその場にいたのに。


 胸糞が悪い。俺に言い残して消えていくなんて。

 どう言う意味なんだ助けてって。

 俺が行った時にはもうあの惨状は起きていたのに、どうすることもできないだろ。

 てか、あいつのことまったく知らないのに助けるも何もないだろ。

 まぁ、いいか。あんなの忘れてしまおう。 

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