逃避行

 騒々しいアラームで起きる。

 いつの間にか寝てたのか。俺は。

「そうだ。今日は何日。」

 スマートフォンの画面を確認すると、

「……27日。」

 また日付が戻っている。

「ってことは!」

 昨日起きたはずの火事のニュースがないか手当たり次第調べた。

 その結果は、何も見つからなかった。

「これなら、彼方はまだ生きてる。」

 俺は、支度をして家を飛び出した。


 1時間弱かかる電車移動がこんなにも煩わしく感じたのは初めてだ。

 大学の最寄り駅に着くと、電車を飛び降りて急いで大学へ向かった。


「おはよ。大地…っておい!」

「すまん!」

 今は構ってる暇はないんだ。

 彼方は、彼方はどこだ。


「彼方!」

 少女は、大学の屋上に1人立っていた。

「大地くん。」

「お前どうゆうことだ。何回も俺に見せしめのように死にやがって。」

「あはは…。ごめんね。」

「今日は一日中俺と一緒にいろ。これ以上お前が死ぬ姿を見たくない。」

「えー、何ー、それって告白?」

「ち、ちげぇよ!」

 はぁ、こいつといると調子が狂うな。

「じゃあ、今日は何しようか。」

「ちょっと遠出しないか?どうせお前ここの生徒じゃないだろ。俺も授業サボりたかったし。」

「遠出するの?!やったぁ!どこ行く?」

「いや特に決めてない。ほら、行くぞ。」

「わわわ!急にてひっパラないでよ!」

 これで、俺が夜まで連れ回せば彼方が事件に巻き込まれることはないだろう。


 その後俺は、飲食店やショッピングモール、ゲームセンターに連れて行った。

 店に入るたびに、顔をキラキラさせて俺に話しかけてきた。

 不覚にも可愛いと思ってしまった。

 夜も遅いしそろそろ帰るか。


「そろそろ帰るぞ。」

「えー。もう帰るの?」

「お前まだ未成年だろ。こんな時間まで連れ回してると俺の分が悪い。」

「……そっか。じゃあ仕方ないね。」

「ほら、電車乗って帰るぞ。」

「電車は……。」

「なんか問題でもあるか?」

「いや、なんでもない。」


 やっぱりこの時間は混んでるな。

 人混みをかき分けて、駅のホームへ向かう。

「離れるんじゃねぇぞ。って、」

 振り返ったが、少女の姿が見えない。まさか。

「彼方!」

 俺が見つけた時には遅かった。

 もう少女は、線路に放り出されていた。

「……大地…!」


 俺はまた助けられなかったのか。

 あの時、手を繋いでいれば、くっそ。


 友介から電話?こんな時になんだよ。

「あ?んだよ。」

『なんだよ。友達にその対応は。友達なくすぞ。』

「お前に関係ないだろ。んで、要件は?」

『いや、今日授業あったはずだろ?姿見かけなかったからさ、どうしたのかと思って。』

「あー、野暮用でな。別にお前には関係ねぇよ。」

『そうなんか。まぁ、風邪とかじゃないならよかった。』

「そんなことで電話か?」

『いやいや、本題はここからだよ。』

「んだよ。さっさと話せ。」

『これからさ、遙と家行っていいか?久々に飲もうぜ。』

「いや、そうゆう気分じゃないから。」

『えー、いいだろ。そうやっていつも断るんだから。てか、もう家のまえにいるし。』

「はぁ?」

 玄関を置けるとそこには友介と遙がいた。

「よっ。」

「お邪魔します。」

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