近い距離の戦い方で負けまくる俺は新しいバトルスタイルを考えた

釣ール

殺すつもりで蹴れ!!

 最低限以上さいていげんいじょうのおしゃれしてるやつはくさってる。


 人の苦労より自分たちの苦労が一番うつくしいって思い込んでる。


 そんなくさってる連中の目の前で日光が苦手な俺がたえまくってランカークラスをリングでねじふせて濃ゆいファンをふやせたらよくあるサクセスストーリーにはならないはずだよなあ。


 俺だって夢を見る。お前らも夢を見る。

 誰かの夢を聞いた時と叶える瞬間を見る時。

 人間の反応は分かりやすい。


 笑うやつは普通。


 嘲笑あざわらうやつは根深い人間関係で苦しんでいる。


 いかるやつは嫉妬しっとしている。しかもたいてい他のやり方で金だけはもうけてる。

 それはそれで別の夢を叶えてたりも。


 馬鹿にするやつは自分の痛みも分からず破綻はたんしている。

 悪い生き方とは思わないけど、インターネットで誰かの悪口を言いながら女の身体をもとめてまともな人間関係を自分だけ作って仏教・宗教・哲学をかじりながらプライドだけ太らせて幸せのおりに閉じ込められている。


 俺はそんな誰でも叶えられる夢なんて興味ねえ。

 日光に弱くていじめられかけた時にムカついたからはっきりと口だけでもいいから攻撃してきたやつらを片っぱしから論破ろんぱしつづけた。


 格闘技をやりはじめたのは別に暴力にたよるわけじゃなくてリングの上で戦いたかっただけだ。


 プロになって結構たつけど白星しろぼしってそんなに増やせないんだな。

 何度も相手の弱点を経験してSNSも使って弱らせたつもりなのに。


 丈夫な身体がうらやましい。

 虚弱体質きょじゃくたいしつのダチもいるけど体脂肪がないだけで筋トレも俺より多くやれちまってるもんな。


 さっきは悪口ばっか言ってるアラサーアラフォーの思想家しそうかたちを馬鹿にしたけど俺も一言いっていいか?


「俺以外の強いやつ全員死ねぇぇぇぇぇぇ!」


 正攻法せいこうほうで身体が丈夫じょうぶなやつらを全員ぶっ倒したい。


 でも他の武器や強みがないと物足りねえ。

 かといって現実世界じゃ他の空間にあるところで修行してチート能力を手に入れられるわけでもないし呪いなんて簡単に見つからない。

 自分の墓穴はかあなをほりたくもないし。


 まあリングの上はともかく番外戦術ばんがいせんじゅつを応用した戦闘技術はほしい。


 椅問処心いすずまいんど、二十三歳。

 平成の二十歳、令和の二十五歳。


 海外からは馬鹿にされてるけど日本人怖いんだぜ。


 せめて女の子に会いにいくか。




*



 十代はモテていた俺も今は相手を限定している。

 自慢じまんじゃないが寝落ち通話とかまでしたことはない。


「スマホ料金節約しないと」


 俺の彼女達はみんな金も大切にしている。

 SNSで慣れてるからか人にみせられる範囲の恋愛シーンと非公開のやり取りを使い分けるのも当然。


処心まいんどひっさしぶり。わざわざ私の方へやってくるってことはまた試したい技でもできた」


 波河乱真はかべらんねる

 名前からは想像できないが俺と同い年の女性だ。


 売れない発明品を予算と戦いながら作っては友人として俺の身体を使い試している。


「発明品を買ってくれてるのは助かるけど処心まいんどなら口だけでどうにかするから販促はんそくになってない」


乱真らんねる。前にもいったろ? 俺は玩具番組おもちゃばんぐみを撮らない古き悪しき脚本家だって 」


「いつの時代の特撮とくさつオタクの話? そもそも興味がないくせにスラングっぽい話ばかりしいれるから恋愛できないって何度も言ったのに。まあいっか。私も売れない発明品ばっかり作ってるから恋愛あきらめたし」


 似た者どうしなのかまったくちがう人間なのか分からない。

 そんなでこぼこコンビが俺たちなのだ。


 あと発明品っていってもリングに何か持ち込むわけじゃなくてジム以外の場所かつ格闘関係ではない女の子のそばできたえたい俺の需要を満たす場所を乱真らんねるは作ってくれたのだ。


 トレーニング方法はほとんど実験でしかなくて意味不明な内容ばかり。


 冷温れいおんトレーニングだとかきりの部屋とか。


 変な薬品とかそんなもの使ってない。

 乱真らんねるはギリ合法的な空間を使って俺を強化しようとしている。


 そんな彼女にたよりきらないよう、俺もジムや乱真らんねるの発明品とはちがう戦闘技術をあみだしていた。


 ここから先の説明はほとんど専門用語になるし、あやしい宗教や何かをキメてると思われたくないからあえて端折はしょる。


 でもチートスキルだったり魔法でもなんでもないんだ。


 試す場所が見つからないなあ。

 近年は軽い暴言も規制されているから何かあったら自分の身は自分で守れと強制されている狂ったリアルディストピアでは強い力は弱くないといけない。


 弱いやつは大人しくされるがままなぐられろってか?

 バカバカしい。


 そこで街を歩いていると二人の少年が誰かにおそわれていた。

 恐喝きょうかつか。

 弱いものにはきびしい世界と誰も助けない街。


 ゆるせない。


「おいお前ら。そこの二人より弱い俺が相手してやる。俺は日光に弱いから明るい場所に誘いこんで一発なぐるだけで死ぬぞ」


 元ネタこいつら分かってるのかな。

 って聞いちゃいねえ!

 もしくは二人を助けようとしているのがバレてこっちの攻撃を誘っているのか?

 物価高騰ぶっかこうとう地球温暖化ちきゅうおんだんかで元々頭がおかしい人間が余計おかしくなったのか。


 仕方がない。

 俺は二人がおそわれているビルの上からタライを落とした。

 どこから持ってきたかだって?

 俺は何度も!!



「てめえ!」


「さっきのセリフただのパロディだと思ってるのならかかってこい」


 ビルの上から安全なパルクールでおりた後、おそわれた二人を逃がして恐喝きょうかつしてたやからをおびきよせる。


 明るい場所は苦手なんだけどな。

 これも人助けだ。

 あと実験。


 さすがに人通りが多い場所に誘ってもさけてきやがる。

 まあ太陽の光がとどかない暗い場所に追い込められるのならいろいろとやりやすい。


 四人も男達がいるとやっぱ怖いな。

 暗い路地裏ろじうらに追いつめられた。


 俺は落ちていたガラスのかけらやプラスチック、木のクズを使って相手が攻撃してきた瞬間に切りつけた。


 不意打ちをさけるためにわざと四人の距離が近い場所に入り込み、肌が露出ろしゅつしている部分を攻撃。反撃をあおって囲まれているのを利用し同士討どうしうちをねらった。


「だから言ったろ。こんな暗くてせまい場所ならいくらでもやりようがあるって」


 あとはスイッチを押して水をやからたちにあびせる。


携帯用滝浴けいたいようたきあびせ装置。ここに入った時にいくつかしかけたいつでも水を楽しめる酷暑対策こくしょたいさく



 能書のうがきなんざどうでもいい!

 乱真らんねるが作った発明品は売れないだけで実用性はある。

 あとはとどめをさすだけ。


「静電気をたくわえちまった。あってもこまるからお前らにあげよう」


 こっちがしびれないように静電気を別の装置にうつたあとに遠距離からジャブをはなって空気砲のように静電気を輩達やからたちにぶつけた。


「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」」


 だから明るい人の多い場所で攻撃してねと言ったのに。

 そんなことできるやつなんてよほどの異常者でないとむりか。


「ギャグ漫画ちゃんと履修りしゅうしておけ」


 したところで意味はないけどなあ!


 笑ってやろうと思ったらさっき助けた二人の男の子たちがやってきた。


「ありがとうございます」


 逃げろっていったのに。

 でも良い子たちだ。


「お前ら弱くなんかないぞ」


 二人は何を言われているのか分かっていなかった。


「自分たちを助けた相手にお礼をわざわざいいにやってこれるお前らは誰よりも強い。忘れないで今日を大切にしてくれ」


 あとは警察を呼んで金を返せさせた。



*



 せっかくだから一度やめた動画でも作ってみるか。


 動画配信で収益もらえてる(一部を除いた)ヤツらは自由といい加減をはきちがえてるし。

 少しくらいやつらに品行方正ひんこうほうせいってやつを見せつけてもいいかもしれない。



「この発明品は誰かにセットアップしてもらったまま自分では扱えなくなったPCを今まで通り自分でも使えるようにしてくれるAIです」


 乱真らんねるがまた宣伝せんでんを行っていた。


 パソコンっていまでも予備知識が結構いるの困るんだよなあ。


乱真らんねる。買って俺もセールス付き合う」


 あと。


乱真らんねるの発明品は実用性がありすぎる。動画撮って試しておいた。これを他の格闘仲間にも売りつけてやるからさ」


 実験は続く。

 そして俺の格闘技術はいつの間にか乱真らんねるの科学が融合ゆうごうした誰も死なせない正当防衛せいとうぼうえいとして完成することが出来た。


 言いそびれちまった。

 乱真らんねるの科学は最高だって。


 結局発明品は少ししか売れなかった。

 でも次は集客しようぜ。


 だから乱真らんねる

 ありがとう。



【了】

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近い距離の戦い方で負けまくる俺は新しいバトルスタイルを考えた 釣ール @pixixy1O

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