第2話 スキル①
春改めラウルとなった彼。
父親の名前はトマス・カーヴェル。
早くに亡くなった初代カーヴェル男爵の跡を継いで男爵となった。冒険者からの成り上がり貴族。貴族らしい雰囲気が無く策略に弱い。
母親の名前はリンダ・カーヴェル。
トマスの父の親友の娘。冒険者として生計を立てていたが、父にならい冒険者となったトマスに見初められ結婚。
特筆すべきことが無い両親に生まれた。それでもラウルにとっては、天国のような空間だった。
剣と魔法の世界。ラウルが生前、憧れていた夢の異世界。
この世界について知った時、テンプレ通り魔力量の底上げを目指したが、魔力を感じることができなかった。
『どうしたら魔法が使えるの?』
『本を読んだのかい? そうだねぇ。運が良ければラウルが5歳になったら使えるかもね』
両親に相談したところ、5歳になると運が良ければ神からスキルが与えられ魔法が使えるようになるらしい。だが、魔法が使えるようになるのはごくわずかだ。そしてスキルは遺伝する可能性が高い。
そのため貴族の間でスキルは一種のステータスとなっており、高位の貴族ほどより強力なスキルを得ることが多い。
また冒険者のほとんどはスキル無しであり、中級レベルでスキル持ち、最上位の冒険者となるとスキルに恵まれた平民である場合がほとんどだ。
ラウルの祖父はどうやら最上位の冒険者だったらしく、王国に多大なる貢献をもたらしたことで男爵になった。だが、その息子のトマスはスキルを授かっていない。
そして母親もスキル無しだ。そのためラウルもスキルを授かる可能性は低い、と父親から説明された。
現実を突きつけられたラウルは泣きそれを聞きつけたリンダがトマスの耳を引っ張ったのはまた別の話。
閑話休題。
「ラウル様。旦那様が執務室にてお待ちしております」
「分かった。セバスチャン」
ルーティーンの読書を自室で行っていたラウルは、執事であるセバスチャンに連れられトマスの部屋へと向かう。
セバスチャンがノックをし部屋に入ると質素な机とそこに向かって仕事をしているトマスが居た。
「来たか。ラウル」
「父上。何事でしょうか?」
「先日5歳を迎えた。教会でスキルの有無を確認するぞ」
「おお! 遂に!」
以前、トマスに告げられたことを忘れたわけでは無い。だが、確認するまで諦めるわけにはいかない。
(絶対、授かるぞぉ!!!)
トマスはやる気十分なラウルを見て苦笑する。
「鑑定は明日だ。男爵領には教会が無いから隣りのベルフォード子爵領へと向かうことになる」
トマスは嫌そうな顔をしながらベルフォード子爵領のことを話す。成り上がり貴族であるカーヴェル男爵を毛嫌いしているらしい。爵位的にも向こうが上でこちらが下。同じ大貴族の派閥であるが、仲は最悪。報告しようにもそもそも子爵の考え方が多数派だ。
ラウルの祖父が生きていた頃であれば、表立って何かあることは無かったが、祖父は既に死亡している。つまり味方が居ないのである。
転生してから5年間、魔法についてのみ勉強していたため周辺領やそもそも国について全くと言っていいほど知らない。
ラウルは口を開けボケっとしながらトマスの愚痴を聞く。
(話なげぇよ! そんなことよりも明日の方が重要だよ!)
ラウルの心の叫びを感じ取ったのか、喉を鳴らして話を終わらせた。
その後は、いつも通り自室に戻り読書の続きをする。運が良ければ魔法が使えるかもしれないと思い、今でも読んでいるスキル大辞典を広げる。
この本には神から授かったスキルについて記録されている。
出版日は王暦1000年。
100年ごとに新版が出ており現在は1008年であるため、8年前に新版が出たばかりだ。
この本を見つけ読み始めてから2年。一向に読み終わる気配が無い。分厚さは前世の国語辞典ほどある。
スキル大辞典はその名の通り辞典であるため読破するものではない。だが、スキルと聞いてラウルの好奇心を止めることなど不可能だ。この世界では狂気とも呼べる辞典読破を目指している。
この本によるとスキルは3つに分かれている。
魔法系スキル、職業系スキル、その他スキルだ。
希少性は魔法>職業>その他の順であり、スキルの強さや有用性もその順だが一部例外がある。代表的な物は<聖女><勇者><魔王>の職業系スキルだ。これらは200年周期に発現するらしく運命に導かれしスキルとして世間では広がっている。
これらのスキルに選ばれし者には困難が待ち受けているらしい。ザ・異世界ファンタジーという感じで憧れることもあるが、面倒事が付きまとう可能性があるため魔法系スキルを欲している。
閑話休題。
いつも読んでいる魔法一覧を覗く。代表的な火、水、風、土、雷の5大魔法。光、闇、空、時の例外魔法。そしていくつかの禁忌魔法。
魔法が使えると貴族に叙爵されたりその強い能力を活かしてS級冒険者になったりできる。
夢が膨らみ1人部屋で笑う。
そしてラウルは明日に備えて眠りについた。
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