第11話 真実の記憶
ミノが静かな道を歩いていると、いつの間にか辺りは美しい花畑に変わっていました。色とりどりの花が風に揺れ、甘い香りが広がっています。花畑の真ん中には、光に包まれた天使たちが立っていました。
「ここにおいで、あなたに見せたいものがあるの。」
天使たちは優しく手招きをします。ミノは少し不安そうにしながらも、天使たちのもとへ近づいていきました。
「何を見せてくれるの?」
天使の一人が微笑んで答えます。
「あなたの心の中にある“真実の記憶”です。」
天使たちはミノを花畑の中心に案内しました。そこには、大きな扉が静かに立っています。その扉はまるで宝石でできているかのように輝いていました。
「この扉の向こうに、あなたが忘れている“真実”が眠っています。」
ミノは少し怖くなりました。
「真実って、何?見たらどうなるの?」
天使は優しくミノの肩に手を置いて言いました。
「心を開いて、怖がらないで。あなたはこの真実を知ることで、もっと強く、もっと優しくなれるわ。」
その言葉を聞いて、ミノは小さくうなずきました。そして、ゆっくりと手を伸ばし、扉に触れました。すると扉がゆっくりと開き、光があふれ出します。
「さあ、進みましょう。」
扉の向こうには、まるで映画のように昔の思い出が映し出されていました。ミノはその光景をじっと見つめました。
最初に映ったのは――まだ小さい頃の自分と家族の姿でした。
父親が疲れた顔をしながらも、一生懸命働いている様子が映し出されます。お金を稼ぐため、毎日遅くまで働いて、帰ってきた父は「疲れた」と言いながらも、ミノの頭を優 しくなでていました。
「お父さん……。」
ミノは小さな声でつぶやきました。天使が言いました。
「お父さんは、あなたのために強くあろうとしたのです。でも、その姿をあなたは“怖い”と感じたかもしれませんね。」
「うん……。お父さん、いつも厳しかったから……。」
天使は優しく続けます。
「お父さんは、あなたを守りたかったのです。厳しさの裏に、たくさんの愛があったことを、今ならわかるはずです。」
次に映し出されたのは、母親の姿です。
母親は毎日忙しそうに料理や掃除をしています。そして、夜、ミノが眠った後に、一人でこっそり涙を流している母親の姿が見えました。
「お母さん、泣いてる……?」
ミノは驚いて言いました。天使が答えます。
「お母さんは、家族のためにいつも頑張っていました。でも、本当はあなたのことを抱きしめてあげたかったのです。でも、忙しさや疲れで、それができなかっただけ。」
ミノの胸がぎゅっと痛くなりました。
「お母さん、ぼくのこと……愛してたんだ。」
天使はにっこりと微笑んで言います。
「そうよ。あなたが思っていた以上に、お母さんはあなたのことを愛していたのです。」
続いて、兄弟姉妹との思い出が映し出されました。
兄弟姉妹たちは、いつもミノとケンカをしていました。でも、そのあと、こっそりとミノのことを気にかけている姿も映し出されました。
――兄がミノの好きなお菓子をこっそり残しておいた日。
――姉が夜遅くまで勉強を教えてくれた日。
「みんな、ぼくのことをちゃんと見てくれてたんだ……。」
ミノは涙がぽろぽろとこぼれ始めました。
思い出の映像は、だんだんと薄れていきます。そして最後に映し出されたのは――ミノ自身の姿でした。
ミノは小さい頃、家族の愛に気づかず、心の扉を閉じてしまっていました。
「どうせ、誰もぼくのことなんて愛してくれない。」
――そう思い込んでいた自分の姿が映し出されます。
天使が静かに語りかけます。
「あなたはずっと、家族の愛を拒絶していたのです。でも、本当はみんな、あなたのことを愛していたのよ。」
ミノは泣きながら言いました。
「ごめんなさい……。ぼく、家族の愛に気づかないで……。ずっと、一人だと思ってた……。」
天使はそっとミノを抱きしめます。
「いいのよ。今、気づけたのだから。あなたはもう一人じゃない。家族の愛は、いつもあなたの中にあるのです。」
ミノの涙は、まるで宝石のように輝いていました。そして、その涙が地面に落ちると、花畑がさらに美しく輝き始めました。ミノの体も温かい光に包まれていきます。
「家族のみんな……ありがとう……。」
心の中にあった重たい気持ちが、涙とともに消えていくのを感じました。そして、その代わりに、温かい愛のエネルギーがミノの心に広がっていきました。
天使たちはミノの前に立ち、にっこりと笑いました。
「これで、あなたの心は浄化され、家族の愛を受け入れることができましたね。」
ミノは涙をぬぐいながら、笑顔で言いました。
「うん。ぼく、もう一人じゃない。家族のみんなの愛が、ずっとぼくの中にあるから。」
天使たちは優しくうなずきます。
「さあ、新しい一歩を踏み出しましょう。あなたはもう、大丈夫。」
ミノはゆっくりと立ち上がり、光に包まれた新しい道へと歩き出しました。
心の中には、もう寂しさや痛みはありません。代わりに、家族の愛という大きな力が、ミノを包んでいるのでした。
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