WW6編 ナノ視点 第十九話 代償

領域の外側から、無言で一連の光景を眺めていたナノは、全てが終わると地面へ力無く倒れ込んだ。圧倒的な火力と物量で彼らを圧倒したナノ。しかし、その代償は余りに大きく、地面に突っ伏したナノは身動き一つ取れなかった。咲いた桜の木から、花弁を身体に吸収し魔力の回復を図る。しかし、それでも失った魔力は大きく、まだ身動きは取れなかった。

ナノ(クソ!まだだ!まだ終わっていない!十禍はまだ一体残っている!ここまで…ここまで来て使命を果たせないのか……!!)

ルミナス首相「ナノ殿!!」

ナノ「しゅ…首相…なぜ…ここに……」

ルミナス首相「先ほどこの区画の避難誘導が終わりましたので、戦いを見ていました」

ナノ「いか……なくては………まだ、敵は……残って……」

ルミナス首相「駄目です!その傷で向かっては死にに行くようなものです!魔力指数では貴方に遠く及ばない私ですが、たった一つだけ、貴方の力を回復させる方法があります」

ナノ「まさか!駄目です!貴方にはまだやるべきことが……!!」

ルミナス首相「禁術 グリード・シェルト」

ルミナスが杖を振るうと、胸元から赫い力の奔流が流れ出る。

ルミナス首相「く、ああぁぁあ……!!」

ルミナスの苦しむ声が響き渡る。しばらく経つと、その奔流は一つの結晶となりナノの体内に入り込んだ。するとナノの力は一瞬にして全快まで回復した。ナノは軽くなった体で、その場に倒れ込んだルミナスに駆け寄る。

ナノ「首相!どうして、私なんかのために!寿命のほぼ全てを犠牲にするなんて!」

禁術という名の通り、その代償は膨大であった

ルミナス首相「はあ…はあ…私の…命など、どうなっても……構いません…敵はまだ………一体…残っ…て…います…戦えるのは……貴方だけ……市民の方々を……守って…死ねるのなら…本望…です……」

涙を拭い、立ち上がるナノ

ナノ「貴方のお命、決して無駄にはしません」

ナノ「四の章・明転の牡鹿」

ナノの矢から現れた牡鹿は、白い光でルミナスを包み込み、彼女を背中に乗せて走り去った。

ナノ「書き換えよ」

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