MW WW6編 ナノ視点 第十七話 恋衣

〜〜場面はマギス郷の戦場へ戻る〜〜

簒奪「提督殿、貴方は全てを出し尽くし、良く戦いまし……」

一同「………!!!」

簒奪が遂にトドメを刺そうとしたその時、ナノの体から、肌が灼ける程の魔力が放出された。

簒奪(これは…攻撃…いや違う!彼女の体内から自然に溢れ出る魔力だ!)

簒奪「真実!ここは大事を取ります!」

真実「了解した。お前たち3体は、安息の結界の中に移動した」

真実「我らは雨注の領域に守られた」

真実の力で、6体は二重の防御の下に入った。安息が造った結界の外では、絶対防御と名高い雨注が白い膜を張っている。これだけの防御の上に、不殺が最後の仕上げを加える。

不殺「祓え、むつらの刻印!」

不殺の杖は真実の腹部に突き刺さった。真実にも、安息の結界についている物と同じ、目玉状の紋様が刻まれた。

不殺「ふう……二つの刻印を同時に展開…ちと骨が折れるが、これで安泰じゃ…」

侮蔑「まったく、簒奪は大袈裟ねえ。ここから逆転できるような技があるなら、今までいくらでも使う機会はあったでしょう?」

簒奪「ですが、先ほどの彼女の魔力は明らかに異常な大きさです。窮鼠猫を噛むとも言いますので、確実に凌ぎましょう」

ナノ「ロザリアの書 奥義……」

侮蔑「あらあら、奥義なんてもう見飽きたわよ」

安息「九の章 不死鳥と、十一の章 雨注…どちらを用いてもこの盤面を覆す要因になるとは思えぬが…それにさっきの魔力は一体……」

ナノ「二の章 枝垂千本桜・恋衣」

一同「………!!!」

聞いたことも無い技名に驚きを隠せない6体。ナノが放った矢は大きく膨張し、桃色の光を纏って天高くへ昇った。その矢は遥か上空で弾けると、何本もの小さな矢に分裂し、地上に幕を下ろした。その幕は6体の十禍たちを包み込んだ。幕の内部では、全てが桃色の花弁に包まれた特殊な空間が広がり、彼らはその光景に思わず呆気に取られた。

不殺「何と……天晴れじゃ…」

簒奪「落ち着きましょう、どんな攻撃であれこの防御を破れるとは考えられません」

まず彼らの目に飛び込んで来たのは、桃色の斬撃であった。その数は一発や二発ではなく、それだけで視界が覆われるほどの数が、それも絶え間なく放たれ続ける。

侮蔑「へえ、なかなかにいい眺めね。肝心の斬撃は全て雨注に弾かれているようだけど」

当然ながら、ナノの奥義はこれで終わりではない。更なる攻撃が彼らの防陣に刺突する。次は聖清莫流によく似た楕円状の斬撃、幕の中心部から降りる螺旋状の斬撃、爆発性の細かい矢が降り注いだ。それはいずれも鮮やかな桃色をしており、更なる絶景と破壊を齎した。

簒奪「まさかここまでの火力が…これはまともに受けていては危なかったですね…ですがこの防御は力押しで破れるものではありません」

そう安心したのも束の間、攻撃の種類は更に増した。今度は幕に張り付いていた桃色の花弁が一斉に突撃する。その数は裕に数京を超えていた。

安息「雨注がある限り、どれだけ攻撃の量を増そうとも変わりは無い。それは奴自身が一番分かっているはずだが………!!!」

花弁が雨注の膜に衝突すると、ほんの少しだけ白い膜に穴が空いた。

真実「これは…あの花弁は、魔力結合を分解する作用を持っている!」

小さな穴は、莫大な数の花弁により確実な抜け穴となる。

簒奪「真実、対応できるのは貴方だけです!」

真実「花弁の刃は全てが消え去っ…かはっ…!」

真実がその力を行使しようとしたその時、突如として真実の喉が切り裂かれた。雨注の内側にある安息の結界を貫通し、彼の喉を射抜いたのはまた別種の攻撃であった。その矢はナノが普段使う矢よりも数倍太く、安息の結界とよく似た光を纏っていた。

安息(これは…私の!まさか私と同じく干渉を拒絶する力!同質の力で私の結界を貫通したのか!まさかあの少女、真実を封じるために、土壇場で技に改良を加えたのか!)

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