ウイルス

6時間後

結局、翔が歴史で習った通り江戸は多くの場所が燃えてなくなってしまった。もちろん徳次郎の長屋も例外ではなく、翔たちは住むところがなくなってしまった。

「大丈夫だ。長屋は建てるのに時間がかからないんだから、少しの間俺の知人の家に住もう。」

「分かりました。」

1週間後

「ようやく建ったな。」

そこには新しくできた長屋があった。そして、その周りには建物を建てるための普請をしていた。2人が中に入ると、以前に比べて綺麗になった部屋が広がっていた。徳次郎は新しくなった長屋に喜んでいたが、翔はあまり喜びよりも心配が勝っていた。理由は、これからウイルスが流行ることを知っていたからだ。

1ヶ月後

隕石の衝突で大量の塵が大気中に舞い上がったせいで江戸の町は全体的に暗かったが、それでも江戸の町は大きな火災があったことを忘れされるくらい復興していた。しかし、江戸では新たな問題が発生していた。それは、ウイルスだ。江戸では伊呂母という致死率90%のウイルスが蔓延しており、次々と人が倒れていくのだ。それは、翔も例外ではなかった。2人は畑仕事の休憩で江戸の町を散歩していた。だが、普段に比べて歩いている人の姿が少なかったのだ。

「どうしたんでしょうね。普段より歩いてる人が少ない気がしますけど。」

「知らないのか?最近伊呂母って言うのが流行ってて、治し方もわからないからあまり出歩かないほうがいいって言われてんだぞ。」

「そうなんですね。」

(そうか…この時代はまだウイルスとかの治し方がまだないのか。)

翔がそう考えてると、町を歩いている人たちのうちの1人が急に倒れた。

「伊呂母だ!」

町にいる人たちのうちの1人がそう叫んだ。すると、町にいた人たちが慌てて逃げた。徳次郎も翔に逃げるように促したが、翔は逆に近づいた。

「大丈夫ですか?」

翔がそう話しかけたが、返答はなかった。翔は倒れた人を背負い、近くにある町医者がいる診療所まで全速力で走った。徳次郎はどうしようもないので、とりあえず翔の後を追った。少しすると、診療所に着いた。

「すみません!」

翔はそう言いながら診療所の扉をノックした。すると、扉が開いて町医者が出てきた。

「どうかしましたか?」

「この人、急に倒れてしまって…」

「おそらく伊呂母ですね、連れてきてくれてありがとうございます。その人はこちらでお預かりします。」

2人はそのまま畑仕事をするために畑に帰った。たが…

翌日

翔はゆっくりと目を開き、周りを見渡した。

「うん…ここは…?」

翔がいる場所は小さい和室で、見覚えがある場所だった。すると、襖が開き、徳次郎が入ってきた。

「大丈夫か?お前、あのあとすぐ倒れてしまったんだぞ。」

翔はそう言われて昨日のことを思い出した。しかし翔はそんなことを思い出す余裕がないくらい気持ち悪く、全身が灰色だった。隣にはいつでも嘔吐してもいいように桶が置いてあった。

「何がしてほしいことがあったら言ってくれ。」

「お水をください…」

「分かった。」

徳次郎はそう言わると井戸から水を汲み、翔に差し出した。翔は水をもらうと水を一気に飲み干した。だが、水を飲み終わった瞬間に吐いてしまった。

「おい、大丈夫か?」

「大丈夫です…」

翔は徳次郎を安心させるためにそう言ったが、実際は大丈夫ではなかった。翔がかかったウイルス、伊呂母は、致死率90%のウイルスでかかったらほとんどの確率で死ぬのだ。翔も自分は死ぬのだと悟っていた。




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