プロロゴス

ばろに

[1]善悪の彼岸で語り合おう

光と闇。

善と悪。

ライトサイドとダークサイド。

この世には相容れない、対立する二つの概念が存在する。

問題は、自分がそのどちらの側に立つかということ。

光を浴び、善を成し、ライトサイドを歩む。

それが、いわば人生の正道と言えるのではないか。

だから私は、今、闇と対峙している。

闇に隠れ、悪を犯し、ダークサイドにはびこる者と。

光が闇と対峙すれば、それはすなわち衝突。

戦いという当然の帰結。

それが開戦の合図というように、私と彼女は同じ動作を開始する。

まず左手を広げ前に出し、その側面に軽く握りこぶしを作った右手をくっつける。

すると握りこぶしの中に柄が出現し、私はそれを強く握りしめる。

次にその掴んだ右手を右方向に振り切ると、柄から光の刀身が伸びてゆく。

現れた刀身を、互いに構える。

違いはたったひとつ。

一方は光。他方は闇。

そのかけ離れた色合いが、対立の証となる。

さあ、戦闘開始。

剣撃。

斬撃。

戦闘。

激突。

何合も刀身をぶつけ合った後に得た結論。

――できる。

謙遜も驕りもなしに見て、力は全くの互角といったところ。

相手もまたそれを察している。

ならば。

渾身の一撃で勝負を決する。

それだけのこと。

両手で握る刀身にありったけの力を込める。

そして、その切っ先を相手に向け思いきり突っ込んだ。

全身全霊を掛けた一撃。

その突きに対して、敵もまた全力で刀身を右から左に薙いだ。

幾度も繰り返された中で、最大の衝突。

光と、闇が、ぶつかり合い、拮抗し、相殺し、消滅した。

何かが弾ける音とともに、全ては過ぎ去っていた。

ただ二人。ただ残された二つの身体にはひとかけらの力も残されていない。

「引き分け、か」

誰に言うでもなく、戦いの終わりを告げる。

それが聞こえたのか聞こえていないのか、敵はこちらにゆっくりと近づいてくる。

まさかつかみ合いの喧嘩をするつもりではないだろう。

交差する。その瞬間。

「始まり……ってわけね」

思わず振り返る。通り過ぎた彼女の後ろ姿を。

すると彼女もこちらを向いており、闇を背に、妖しく微笑んだ。

そして、闇に紛れた。

彼女の存在がこの場から消え失せていた。

私は再び前を向く。

そこにはまばゆいばかりの光が広がっている。

そこへ向かって、私は真っすぐに歩く。

そして私は、光の中に消える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年12月19日 18:00
2024年12月20日 18:00
2024年12月21日 18:00

プロロゴス ばろに @baronofslg

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ