釘のピアス
土下座させられ、蔑まれ、プライドも全て壊された牧美は目を閉じて、何も考えないようにしているしかなかった。
「お化粧してオシャレになって……あとはピアスを開けてあげる。これで生まれ変われるわよ」
愛里が雑誌の撮影の時にしているような演技的な笑みを浮かべた。
感情のない優し気な笑み、それが牧美を心底、恐怖させた。
「ねえ、エス美もそう思うわよね?」
「はい、愛里様のおっしゃる通り!今からアンタを改造してあげる」
エス美がポケットから釘とハンマーを取り出した。
「やめて……何するの? お願い、許して……釘とかだけは本当にやめて下さい」
牧美が震えながら懇願する。
だが、エス美は聞く耳を持たず牧美を地面に押し倒し、馬乗りになった。
そして、手に持った釘の先端を牧美の耳たぶに押し当てる。
冷たい釘の感触がだんだんと痛みに変わり、耳たぶの皮膚が裂け血の混じった半透明のリンパ液がこぼれた。
牧美は自分を家畜あるいは物のようにしか思っていないエス美たちに底知れぬ恐怖を感じた。
「動かない方がいいわよ、動くと頭蓋骨を割っちゃうかもよォ!!!」
エス美は嬉々としながら怯える牧美の耳たぶに釘を押し当てると、勢いよくハンマーを叩きつける。
釘が耳を貫通すると血が噴き出し、飛び出した釘の先端は地面に突き刺さった。
「ほぎゃわああああああああああ!!!!」
牧美は激痛に悲鳴を上げた。
その様子を見ながら愛里はニヤニヤと笑っている。
「もし、誰かに聞かれたら自分でピアスを開けようとしたって言いなさいよ! 先生にチクッたらアンタの家族も標的にするから!!」
愛美は吐き捨てるように言うとエス美とドーリーを連れて公園を去っていく。
1人残された牧美は涙も枯れた目で、夕方の空を見つめている。
空だけは劣等感もあまり感じる事もなく、辛いこともあまりなかった幼少の頃と変わらないのが悲しく感じられたのだ。
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