魔界からの囁き

日が暮れても、牧美は寝転んだまま痛みと悔しさに悶えていた。




「悔しいだろう? あいつらが憎いだろう? 復讐したいとは思わないか?」




どこからともなく、低い女の声が聞こえてきた。




「あなたは誰なの?」




牧美は恐る恐る尋ねた。




「私は妖魔ヴァーミリアス、魔界の仮面職人だ。お前が望むのなら、美しい容姿に変えてやろう」




声の主が言うと牧美は思わず目を輝かせた。




「えっ? 美しい容姿に変えてくれるの? 私を……」




牧美は得体の知れない声の主に希望を見出した。




「そうだとも、私もお前と同じ境遇なのだ、だから私にもお前の辛い気持ちがわかる」




声の主が静かな声で言った。




「あなたも私と同じ?」




牧美が尋ねた。




「そうとも、私も醜い容姿のために魔界では同じ妖魔たちからも蔑まされてきたのだ。誰も私を女としては見てくれなかった……」




そう言う声の主に牧美は他人とは思えない共感を覚えた。




「もし私を受け入れ、私と一体化するなら全ての願いを叶えてやろう。私たちは美しい姿を手に入れ、お前を苦しめた奴等にも復讐できるのだ」




「受け入れるわ、それに私、友達が欲しかったの。ヴァーミリアスさん、あなたと一体化するって事は私は、これから一人じゃないのね」




牧美が姿なき相手に微笑んだ。




「そうだとも、共に我らを見下した連中を見返してやろうではないか」




声の主が言うと、牧美の全身を得体の知れないエネルギーが駆け巡った。




その感覚は全身に電撃が走るような快感だった。




「はあっ!!うう……私は……私は生まれ変わるッ!!」




牧美は何者かに操られるように、前衛舞踏のように体をよじせた。




異次元の存在が細胞レベルで牧美と融合する。




見る見るうちに牧美の髪の毛は鮮血のように赤い触手に変わり、全身は緑色に変化した。




また、身長も高くなり、脂肪しかなかった体は筋肉質となり、胸や尻も大きくなっている。


今この瞬間から、牧美と妖魔ヴァーミリアスは一つの存在として生まれ変わったのだ。


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