コトバ生成

神田(kanda)

コトバ生成

スマホの中から小人が指示をしてきた。

信じられないことだと思う。僕にだって信じられない。ただ、この幻想はあきらかに僕の妄想であることは、はっきりしていた。

何やら、メモアプリに文字を打って車を作って欲しいらしい。

どうやらこのスマホは小人たちの世界と一時的に繋がっているようだった。

適当に I love me.と書く。

すると、

「おお、こいつはいい、細くて運転がきく、感謝するぜぃ」

すると、その文字列に乗った小人は勢いよく画面の左へ行った。


少ししてからまた、文字列を打つことをたのまれた。それもたくさん必要とのことだ。

I have a pen.

I'm fine.

Where is he from?

He is from here.

一応たくさん書いた。

どうやらWhereの部分が高評価のようだ。

ありがとうと言われながら、ボーッと見ていると、スマホの右端から銃声が鳴り響いた。I'm fine. に乗っていた男の脳天から血が吹き出した。

「まずい、逃げるぞ」

と言って小人たちは逃げ、その後を追うように別の小人たちも画面の左の方へ行った。

すると、僕の肩の上を通って、小人よりもさらに小さい子たちが、よちよちあるいて、スマホの中に、まるで我々人間がお風呂に入る時のような動作で入っていった。

「ありがとー」とみんな言って、僕にお辞儀をしてくれた。

僕はいえいえこちらこそと言って手を振ってあげた。


次の日、何となくスマホを開くと、小人の死体が転がっていた。体には銃痕があったため昨日のやつらに撃たれたのかと思った。好奇心でスマホの中に手を突っ込んでツンツンすると、

「まだ、死んどらんわ!」

と言われて、すみませんすみませんと謝った。

すると、謝るのなら、誠意を示せと言われたので、

You're hungry~

と入力してあげた。

「おお、こいつはいい武器だな!ありがたくもらっていくぜ!」

ご満悦のようだった。


また次の日スマホを開くと、You're hungry~という文字列を持った小人たちが、別の小人たちを蹂躙していた。どうやら、大量生産に成功したらしい。

僕は、調子はどう? と聞いた。すると、最高の気分だ! と言われたので、少し嬉しくなった。たとえ相手が小人であろうが、ロボットであろうが、僕のしたことで喜ばれたら嬉しい。


それから一週間ほどの時が経ち、久々にスマホを開くと、例の小人が、

「頼む、腹が減ったんだ、食い物を恵んでくれ。」

と言っていた。周囲には倒壊したビルや、小人の死体で溢れかえっていた。

僕は、

I am god.

と入力した。

すると、

「いや、武器はもういらない。」

と言われたので、次は

God is dead.

と入力した。

すると、

「違う、違うんだ、俺が欲しいのはそんなものじゃなくて、食い物なんだ。食い物をくれ。」

と言っていた。

あまりにも必死に懇願する様を見て、とても可哀想に思えたので、何とか頑張って食べ物を作ろうと思って、次は、

Oh my god!

と入力した。

これならどうだ! と意気揚々としていたのだが、例の小人からの反応がなかった。

いつかの時のように、ツンツンしたのだが、反応がなかった。

僕は飽きてしまって、スマホをパタリと閉じた。

妄想とは、つまらないものだなぁと思った。



―コトバ生成―

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