恋疲労

キコリ

恋疲労


―—―—―恋愛、疲れたなぁ・・・・。


 そんなことを思ってしまうのは、年の瀬でもある12月だからなのか、クリスマスというイベントに活気づく町、大学、バイト先(!?)があるからなのか・・・・。未だ自分でも理由が分かっていないその感情を、ずっと抱えてしまっている。



・・・



 ちょっと価値観の合わなかった元カレと別れ、早1年が過ぎていた。向こうには新しいパートナーがいるらしい。Instagramのストーリーでツーショット写真を見た瞬間、新しい幸せを邪魔したくない感情と、取り残された感情が入り混じって、気づけばフォローを外していた。私は元カレと相反して、元カレの言動に傷ついた心に向き合いながら、孤独の道まっしぐらに進んでいる。世の中不平等ですね、とはこういうことを言うのだなと、その幸せそうな写真を見てから、やたら思うようになった。


 恋愛は、元々憧れが強くて苦手意識を持っていない人種だった。むしろ、同性よりも異性と話している方が気楽に感じることもあるし、同性の友人も異性の友人も同じぐらいいる方だった。それこそ、恋愛も友人から始まることが多かった。自分から誰かを好きになることは少ないが、誰かから好意を寄せてくれると、その人のことを好きになり、しばらくしてからお付き合いをする・・・・こんなありきたりな展開は何回か経験した。前述した元カレも、その流れだった。が、ちょっと強引だった。

 元カレとは、友人から共通の趣味を通して恋愛に展開・・・・と思えば、自然と向こうの愚痴を聞くマシンのような生活をしていた(その他にも色々とあった)。もはやハッキリと別れて正解、とは思うけれど、気まずいひとが大学で増えるのは生活しにくい。この元カレだけなら「イレギュラーだったね!」と思えるのだが、今までご縁のあったパートナーはみんな、そんな性質があった。愚痴や暴言、なんなら手をあげられたことで、どことなく「自分にはそんな恋愛しかできないのかも・・・・。」と、絶妙に焦りや寂しさが漂い始めた。最近は特にそうだと思う。


 ちなみに、お別れした後は、意外とさっぱりしている性分 "だった" 。たいてい別れを切り出すのは私の方からで、「別れないで」と引き止めるパートナーの例もない。それは私にも問題があったのかもしれない。はたまた、お互いどこかで終わりを探していたのかもしれない。ただ―—―—―どんな別れをしたにせよ、数日のうちに綺麗に忘れるような性分 "だった" 。



・・・



『こんな体調不良だと思わなかった、外出できなくてイライラしたんだよね。』



 あなたの元カレ、こんなこと言っていたよ。と、別れて2か月が経った時、当時1番仲の良かった同性の友人が教えてくれた。この友人、他の大学にパートナーが既にいたにも関わらず、私の元カレと飲みに行き、泥酔して終電を逃がし、元カレの家に泊まったことを、私の方にLINEをしてくる程タフで強い女性だった。どんなに仲が良くても、私はこういう女性にはなりたくないと思ってしまった。

 ただ、1つだけ友人(今は既に "元" 友人、なのだが、さすがに分かりにくい気がするので、ここでは友人と置くことにする)に感謝すべきことは、元カレが私に思っていたことを聞き、伝えてくれたことだった。


 体調が崩れやすい性質は、今に始まったことではなかった。何年も前から原因不明で治療を続け、色々な病院にお世話になってきていた。それは細かく話さずとも、付き合う前や付き合っている時には、元カレに伝えた "つもり" だった。ただ、自分の感情や言葉は、自分の思っている10%も伝わらない。自分が体調不良だったこと、元カレに心を開くことができなかったことも原因だと考え始めてしまったが最後、友人から伝えられた時から痛く傷心している気がする。

 ここまで来ると、前まで綺麗に忘れることができていた恋愛が、中々ほどけない有線のイヤホンのように絡み合ってしまった。今、私は完全に絡み切ったイヤホンを、ほどけ切ることができぬまま、1人の時間を噛みしめるように生活している。



・・・



「恋愛って本当に難しいものだよね。1か月に1度は特別な場所に行く、ツーショットは沢山撮る、2人でずっと遊ぶ・・・・みたいな大学生の恋愛は、僕たちにとって必ず無理なものがあるよ。」


 ある時、高校時代からことあるごとに連絡を取っている異性の友人に相談すると、そんな返事が電話越しに来た。「田舎がいい、都会は住みにくいって考えている時点で、大学生じゃないと、僕は思う。」

「人生何周も回っているからね。」

 ・・・・ボケのつもりで言ったのに、変に冷静で言ったせいで、友人にはあまりウケなかった。

「姉さんは、恋愛したいの?」

 異性の友人が、純粋な疑問をぶつけるように聞いてくる。(この友人、実の姉でもない私のことを、そう呼ぶ癖がある。嫌いではない!笑)

「いやぁ・・・・どうなんだろうね。孤独死はしたくないって感じだよ。ただ、今はもう・・・・一旦疲れたね。」

「孤独死ねぇ。」

「自分の好きな名字がなくなるのは嫌だなって、なんとなく思ってはいる・・・・でも、やっぱり体調のことがあるから、どうせ好きになってくれる人はいない、素を出すことはできないよなって、ほとほと諦めているのが今だと思っている。」

「うぅん・・・・今後に幸あれだね!」

「まっ、そうだね!」

 ・・・・なんの解決にもなっていないけれど、その友人と会話はどんな始まりであろうとも、そんな今後の幸せを無条件に願う形で帰結した。あと、次に話す機会がある時はギャグセンスを磨いてウケを狙えるようにしようと思う。これは恋愛に関係ない、ただの意地である。誠に変な意地だなと思う。



・・・



 そんな恋愛の過去や今の感情をぐるぐるしているうちに、私は「恋愛に疲れた。」という、ただただ何の気もない一言を呟いていた。その言葉は、6畳のアパートに浮遊して、私の周りをゆっくりと回っているようだ。恋に疲労なんてあるかと思ったが、やはりどうしても、私は今、疲れているのかもしれない。


 恋愛だけが幸せではないと思う。恋愛に支配され、恋愛に依存するような生き方は、私の性格には合わないと思う。

 ただ、私はきっと「自分の素を見せられる、心がホッと温まる人といたい」のだと思う。今まで見せることのできなかった「本当の自分」を見せても大丈夫だろう、と思える人と出会えたその時は、少しばかり、今の私から変化することができるのだとうと思う。


 そんなことを思いながら、今年が終わりそうです。


 みなさんも、「恋疲労」にはお気を付けて、温かくしてください。

 そして、過ごしやすい生活を、過ごしやすい人と生活できますようにと願って。




                  終

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