第3話 イザベルSIDE 私が殺したんだ
ドルマンに続いてフドラの部屋に入ったわ。
パーティを追放されたからって、私に振られたからって不貞腐れて。
確かに貴方は優しかったけど、男としての魅力が無いのよ。
仕方ない……叩き起こそう......うんそうしよう。
そう思っていたら、ドルマンが真っ青になって走りだした。
上からぶら下がっているフドラを抱えている。
嘘でしょう……フドラどうして?
私が貴方を振ったから……仲間から追放されたから。
自殺しようとしたの。
ドルマンがエルザやセシリアに指示するなか、私はただ、立ち尽くすしか出来なかった。
だって……もしフドラが死んだら、それはどう考えても私のせいだ。
私がフドラを振っただけじゃ無く冷たくしたからだ。
『大丈夫よね、死んでないよね』
此処には回復魔法のエキスパート聖女のセシリアがいる。
彼女の回復魔法ならきっと大丈夫よ。
だけど……
「もう良いんだ……フドラはもう死んでいる……」
ドルマンが静止を掛けた。
「嘘よ……嘘よ……昨日まで生きていたんだから、昨日だって、昨日だって……」
フドラが死ぬなんて考えられなかった。
昨日は生きていた。
悲しそうな顔に笑顔を浮かべて生きていた。
エルザは泣き出し、セシリアは一心不乱に回復魔法をかけているけど、フドラが目を覚まさない。
フドラが死んじゃった……
「あはははっ! フドラ死んじゃったよッ! フドラが死んだぁぁぁぁーーー」
ドルマンが狂ったように泣きながら叫んでいる。
なんで……なんで死んじゃうの?
振られた位で…….
ただ、仲間から追放した位で、なんで死ぬの……
『いや、なんでこうならないと思ったの?』
フドラは友達思いで人一倍私達に優しかった。
『恋人の時どうだった?』
私みたいな生意気な女をまるで宝物のように大切にしてくれていたわ。
怒鳴ったり、時にはビンタまでしたのにフドラは笑っていた。
もし、同じ事をドルマンにしたら決してかれは許さないわ。
ドルマンに相手にされない私に手を伸べ優しくしてくれ……
『君は一人じゃないよ。いつも俺が傍にいるから』
そう言ってくれたのはフドラだったじゃない。
『本当に私はドルマンが好きだったの?』
多分違う、エルザやセシリアに女として負ける悔しさや『勇者の恋人』というステータスからつき合ったんじゃないの?
私はフドラが本当に好きなのか解らない…….
だけど、フドラは私だけを愛してくれた。
そんな彼を振るだけじゃなく……私は幼馴染としても別れを告げた。
『私もドルマンの意見に賛成だわ!貴方はもうこのパーティについていけないじゃない。きっと近いうちに死ぬか大怪我をするわ……さっさと辞めた方が良いわ。これは貴方の事を思って言っているのよ』
『イザベル、解ったよ! もう良い……俺なんてもう要らないんだよな』
『そんなわけじゃないの、私は貴方が……』
『良いよ。俺なんか必要なんだよな……もう良いよ』
『ごめんなさい……』
私がフドラを傷つけた……
ううん、それだけじゃない。
『イザベルがドルマンと愛し合っているのは知っているよ……それでも俺は幼馴染で友達だと思っていたんだ……違うのかい』
『知っていたのね?』
『相手がドルマンじゃ仕方ない、ドルマンは勇者だし凄い奴だ! ドルマンなら諦めもつく、別に恋人に戻りたい訳じゃない……ただ、幼馴染の輪の中にいたいだけだなんだ……それも許してはくれないのかな?』
『ごめんなさい!』
『そっか。そう、もう気にしないで良いよ……困らせてごめんね』
居場所迄奪った。
あははっ、フドラを殺したのはドルマンじゃない。
エルザでもセシリアでもない。
私が殺しちゃったんだ。
幼馴染で私を愛してくれたフドラを私が殺しちゃったんだ。
どうすれば良いの?
今からドルマンと別れてもフドラは何処にもいない。
フドラに何も償えない…….
私は馬鹿だ……恋人としてフドラを振ったあげく。
幼馴染としての居場所迄奪った。
だから、フドラは死んじゃったんだ。
私が……フドラを殺した。
「私のせいでフドラが死んじゃった……ああっあああああああーーっフドラーーーっごめんなさいぃぃぃぃーー」
『いいよ……今迄ありがとう……みんな、ううっ、さようなら、みんな、大好き……』
笑いながら泣きながらフドラは去っていった。
あの時、なんで気がつかなかったの『さよなら』の意味に。
冷静に考えたらあの時、もうフドラは死ぬ気だった。
あんな最低な事したのに『大好き』そういってフドラは死んじゃった。
フドラ……ごめんね。
私、どうしたらよいの……
どうして良いか解らず。
私は遠くからフドラを見つめる事しか出来なかった。
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