第2話 ドルマンSIDE フドラ去った後


俺は急いでフドラを抱えた。


「なにをしているんだ! エルザロープを斬れ! セシリア回復魔法だ!」


「解った。スラッシュ!」


エルザにより首を吊っていたロープが斬られフドラの重みが俺にのしかかって来た。


「すぐにヒールをかけるわ!」


駄目だ……もう冷たい。


「セシリア……もう良い……」


フドラの体は冷え切っていて、もう死んでいるのが解った。


「ドルマン、もう良いってなに! すぐにヒールを掛けるわ」


「もう良いんだ……フドラはもう死んでいる……」


「嘘だよね?」


エルザが目に涙を浮かべながら聞いてきた。


「嘘よ……嘘よ……昨日まで生きていたんだから、昨日だって、昨日だって……」


いつも冷静なイザベルの顔が歪み、目に涙が溜まっている。


「私は……私は信じない……ヒール、ハイヒール……フドラ目を覚ましてよ……フドラっ……フドラーーーーっ」


セシリアは一心不乱に回復魔法をかけているが、フドラが目を覚ますことは無い。


幾らセシリアが聖女でも、死者蘇生は出来ない。


抱えて下ろしたから、俺には解る。


フドラの体は冷え切っていた。


死んでいるのは、俺にはもう解っていた。


『俺はただ追放しただけだ』


確かに俺は幼馴染の女を独占してお前を追放した。


だけど、俺はお前に死んで欲しいなんて思っていなかった。


追放しても何処かで幸せに暮らすと思っていた。


新しいパートナーを見つけ、幸せに暮らす。


そう思っていたんだ。


なのに……なのに……なんでお前は死んじゃうんだよ。


そんなに俺達の中にいたかったのか?


三人の女が全員俺の物になったようなハーレムパーティでもお前は居たかったのかよ!


『解っている』


お前はそれでも居たかったんだよな……


「あはははっ! フドラ死んじゃったよッ! フドラが死んだぁぁぁぁーーー」


俺が……彼奴の居場所を奪ったからフドラは死んだのか。


それ位で死ぬなんて思わなかったんだよ……


俺のパーティを追い出しても俺とは関係のない所で勝手に生きていくそう思っていたんだ。


『本当にそうなのか?』


自分がモテる事を彼奴に見せつけたったじゃないのか?


勇者になった俺は彼奴を見下していなかったか?


彼奴を追い詰めていたんじゃないか…….


馬鹿だ!俺は……俺達はいつも5人で過ごしてきた。


協力関係になった奴はいても『仲間』と言えるのは5人しか居ない。


もし、勇者にならない人生を俺が送ったら……1人としか結婚が出来ないから残りの二人のうちの誰かとフドラが結婚して一生村で仲良く暮したのかも知れない。


俺に男の友達は彼奴しか居ない。


『親友』だ。


自分だったらどうだ……『親友』と『幼馴染』自分の大切な物全てを失って、絶望しないのか?


死にはしない。


だが、それでもかなり落ち込むと思う。


フドラは……彼奴は俺以上に仲間思いだった。


彼奴が悲しむ事は想像がついたじゃないか……


なんで俺はイザベルまで奪ったんだ。


フドラは俺に遠慮して選んだのがイザベルの可能性がある。


俺は最低だ……マウントを取りたいが為にイザベルまで俺は手を出した。


『なんでそうしたんだ?』


俺は彼奴になにがしたかったんだ……


『凄い』


そう思わせたかったのか……


俺はそこまでしてイザベルが欲しかったのか?


イザベルは俺の好みなのか……違う……俺の好きな理想の女の対極にいる女だ。


理屈っぽくて好みじゃない。


『なら何故俺は奪った』


フドラにマウントを取りたかったから……


そんな事の為に、好きでも無い女を奪ったんだ俺は。


もし、俺が馬鹿な事を考えなければフドラは死ななかったのかも知れない。


そうすれば今も5人で笑っていたのかも知れない。


これで俺の理想のハーレムパーティになった。


なる筈が無い。


三人はさっきから嗚咽をあげて泣いている。


俺も……涙が出て来た……このメンバーで居るときっと、これからもフドラの事を思いだす。


彼奴は『親友』だったんだ。


俺は馬鹿だった……クソッ。


彼奴は俺達に最後に何を言った?


彼奴は……


『いいよ……今迄ありがとう……みんな、ううっ、さようなら、みんな、大好き……』


そうだ『大好き』って言った。


そして『さよなら』とも言っていた。


あの時の彼奴はどんな顔をしていた。


悲しそうだった......あの時の『さよなら』は彼奴の別れの言葉だったんだ。


あの時からきっと彼奴は死ぬつもりだったんだ。


あれががフドラの最後の別れの言葉だった。


なんで俺は気がつかなかったんだよ.......親友じゃなかったのか?


「うっうっフドラ……フドラぁぁぁぁーーー」


幾ら叫んでも後悔しても無駄だ……


悲しそうに俺達を見つめるフドラの瞳は何も語らない。


フドラはもう死んでいるのだから……


『俺は本当に取り返しのつかない事をした』


多分、この悲しみは.......そう簡単に癒されることは無いのだろう。



フドラ.......ごめんよ......

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