【カクヨム10短編参加作品】居場所を奪われた俺は人生に疲れたので死ぬ事にしました！ みんな、さようなら！ あとの事はもう知らない。

第1話 さようなら、みんな、大好き

パーティリーダーであり勇者のジョブを持つドルマンが告げる。

「悪いが今日でクビだ」

「そうか……」

　ドルマンとは幼なじみだ。

『今迄ずっと仲間で支え合いながらやっとここまで来た』俺はそう思っていたがどうやら違うようだ。

　俺なりに尽くしてきたつもりだった……

　剣聖のエルザ

　聖女のセシリア

　賢者のイザベル

　ドルマンと俺、五人揃ってＳランクパーティー『ブラックウイング』そう呼ばれている。

やや中二病な名前だがまぁドルマンは勇者だし、剣聖や、聖女、賢者まで居るから可笑しくない。

素晴らしい幼馴染と親友に囲まれて俺は幸せだ。

そう思っていた。

確かに最近の俺は取り残されていたし、ジョブの差で成長した4人に能力が追いついていないのは事実だ。

だからこそ、他の事で貢献できればそう思い、雑用を頑張っていた。

誰よりも早く起き、誰よりも遅くまで仕事をし、寝る生活。

それも大切な仲間と為、そう思えたら苦じゃなかった。

それでもクビなのか……きついな。

俺だってAランクだ。

此処を出れば、幾らでも次があるんだからしがみつく必要は本来は無い。

こいつ等が凄いだけで他のパーティなら充分通用するし、Bランクまで落とせば恐らく引く手あまただ。

その位の価値はあるのは理解している。

だけど、『それでも俺はここに居たい』

親友や幼馴染の傍にいたいんだ。

『ドルマン……皆、これで本当に終わりなのか？　俺はもう要らないんのか』

「ついて来られないのは分かっているだろフドラ」

「そうだな、確かに戦士の俺じゃ皆に戦闘でついて行くのは、難しいな」

俺にはドルマンや皆みたいな優れたジョブは無い

だから、家事に炊事に洗濯、書類仕事を頑張っていたんだよ。

それじゃ駄目なのか……それじゃ......

みんながドルマンが好きなのは知っている。

「勇者とし大きく飛躍するには大きな手柄が必要なんだ。残念ながらお前とじゃ無理なんだ。なぁ分かってくれよ、パーティを抜けてもお前が親友なのは変わりないからな。」

親友、幼馴染それ以上を俺は望まない、それで俺は良かったんだ。

親友なのに、俺の居場所を奪うのか。

俺の恋人を奪うのか……

尽くしていた俺を蔑んだりするのか……

他のみんなはどうなんだよ。

俺は元恋人であるイザベルの目を見た、彼女ももう昔の優しい目をして居ないしドルマンの女になっているのも知っている。

別にそれは良いんだ。

ドルマンは俺からみても凄い奴だからな。

「私もドルマンの意見に賛成だわ！貴方はもうこのパーティについていけないじゃない。きっと近いうちに死ぬか大怪我をするわ……さっさと辞めた方が良いわ。これは貴方の事を思って言っているのよ」

『ドルマンの事が貴方より好きなの……だから元の幼馴染に戻りましょう』

それで良いんだよ。

イザベル。

もう、友人としても幼馴染としても傍にいられないのかい？

そんなに、俺が邪魔なのか......辛いな。

『君が幸せならそれで良かった』のに......

親友として二人を見守る事も祝福する事も許してくれないのかい？

薬指には見覚えのない指輪があった、多分ドルマンが買ってくれたんだろう。

俺のあげた指輪はもうしていない。

俺よりドルマンの方が好き。

それは仕方ない。

ドルマンはたしかに凄いよ......男として負けたのは解る。

他の2人も同じ指輪をはめていた。

みんながドルマンを好き。

そう言う事だよな。

ハーレムパーティーだから、俺は要らない。

それは解っている。

別にそれは悲しいけど仕方が無い。

だけど、親友幼馴染としても俺は傍にいられないのか。

俺にとってはお前達が全てだった。

生まれた時から村で育ち今迄一緒だったんだ。

人生の全てを一緒に過ごしたんだ......お前達は今の俺の全てなんだよ。

これからも一緒だと思っていたんだ……

だけど、みんなにとって俺は必要ないんだよな。

良いよ。

解った。

だだをこねても仕方が無い。

「イザベル、解ったよ！　もう良い……俺なんてもう要らないんだよな」

「そんなわけじゃないの、私は貴方が……」

もう良いよ。

「良いよ。俺なんか必要なんだよな……もう良いよ」

「ごめんなさい……」

『ごめんなさい』

此処には本当に俺の居場所なんてないんだな。

幼馴染？　親友……ははは、そんな物に意味なんて無かったのか。

「イザベルがドルマンと愛し合っているのは知っているよ……それでも俺は幼馴染で友達だと思っていたんだ……違うのかい」

「知っていたのね？」

逢瀬を直に見たからね……

「相手がドルマンじゃ仕方ない、ドルマンは勇者だし凄い奴だ！　ドルマンなら諦めもつく、別に恋人に戻りたい訳じゃない……ただ、幼馴染の輪の中にいたいだけだなんだ……それも許してはくれないのかな？」

「ごめんなさい！」

「そっか。そう、もう気にしないで良いよ……困らせてごめんね」

もうどうでも良くなった……もう。

俺が振られて、新しい恋人がドルマンになったそれだけだ。

それを認めてもこの輪の中にいられないんだ……

『元から貴方は要らない存在』

そう言われている気がする。

本当に俺は要らない存在だったんだな。

「大人しく村に帰って田舎で冒険者にでもなるか、別の弱いパーティでも探すんだな」

「ドルマン、わかった……俺は要らないんだな」

　何もかも受け入れても此処にはいられないんだよな。

ドルマン……なんで笑っているんだ。

俺が去るのがそんなに嬉しいのか。

何をしても優秀で、顔も良くて、強くて、おまけに勇者に選ばれた。

そんなお前を、俺は自慢に思っていたし誇りに思っていたよ。

親友じゃなかったのか。

イザベルは確かにおれの恋人だったが、それもお前のパーティにいるから選んだんだよ。

勇者パーティに居るならメンバー以外に選択肢が無い、エルザとセシリアをお前が好きだと解っていたから選んだんだ。

全員欲しかったのなら言えば良かったんだよ。

俺は俺なりに親友だったお前が過ごしやすいように配慮したつもりだったんだ。

幼馴染パーティが上手く回るように俺なりに考えていたんだ。

それでも、俺には居場所がないんだな……

良いよ……笑顔で去ってやるよ。

「さようなら、フドラ」

「さようなら」

「貴方より！ドルマンの方がごめんね」

　三人の幼なじみが一斉にお別れの言葉を言ってくる。

思ったより堪えるなこれは……思わず涙が出て来る。

「いいよ……今迄ありがとう……みんな、ううっ、さようなら、みんな、大好き……」

笑顔でここを去りたかったのに涙がこぼれ落ちてきた。

俺は泣きながらパーティを去った。

◆◆◆

次の日、フドラが部屋から出て来ないと宿屋の主人が騒いでいた。

ドルマン達が合いカギを借り、部屋を開けると……

そこには首を吊りぶら下がっているフドラの姿があった。