Four Chocolate)君のチョコレート
Magic1.しよう、告白!
第45話
年が明けたらすぐに冬休みも終わちゃって、今日から新学期が始まる。
相変わらず寒いし、全然気分上がらないな。
…あれから小鳩とは会ってなくて。
誘いずらいし、連絡も取ってない、てゆーか連絡先も知らないんだけど。
あのカフェを出た結婚式の帰り、いつもと変わらない様子で帰っていった。
なんならわりとあっさりみたいな、別れた途端スタスタ行っちゃうみたいなあの感じ。むしろ私の方が感傷に浸っちゃって全然帰る気になれなかった。
カフェ出た瞬間、それでは!って言ってきた小鳩何なの。
あんなに泣きそうな顔してたのに嘘みたいに普通の顔してた。
何考えてるのかやっぱりわからない。
今は何考えてるのかな。
今日から部活も始まるけど、小鳩は戻って来ないのかな。
「みんなー、あけおめ~!今日からチョコ研もまたよろしくね!」
森中部長の挨拶から始まった今年のチョコ研、“みんな”って言ったけどいるのは私とそらぴょんで小鳩の姿はなかった。
もしかして…ってちょっと期待したけど、来ないか。辞めちゃったんだもんね。
“もう琴乃にはチョコレート作らないよ”
チョコレート作る理由も、なくなっちゃった…もんね。
「笹原くんも柳澤ちゃんも!これからチョコ研最大のイベントが始まるからよく聞いて!」
調理実習台のイスに座る私たちの前に、どんっと台に手を付け立ち上がった。
やたら気合いの入る森中部長を見ながら何を言われるのかなって考えてた。
3学期ってそんな大きなイベントあったっけ?文化祭より大きなイベントでしょ?
卒業式ぐらいしか…
「2月14日はバレンタインデーです!」
それは予想外、でも“チョコレート”研究会なんだから確かに外せないイベントではあるかも。
「毎年力入れてるチョコ研最大の活動なんだよ!」
「それってどんな活動なんですか?」
目をキラキラ輝かせご機嫌に話す森中部長にそらぴょんが尋ねた。
バレンタインって言っても学校公式の行事じゃないし、そうだよね、何するか気になるよね。
「とびっきりおいしいチョコレートを作る!」
それはごくごく日常と変わらない活動で。
「それで、好きな人に渡すんだよ!」
すっごくドキドキする内容だった。
「私たちの部活って大会があるわけでもないし、何か結果を残せるわけでもないでしょ?だから1年間の活動の集大成として、自信あるチョコレートを作って、好きな人に渡す…これがチョコ研の伝統なの」
なんかその言葉にはグッと胸に響いちゃって。
私がチョコ研に入ってからまだ半年も経ってないけど、これが今の私のキッカケかと思った。
「白沼先生にも当日作ったチョコレート渡してもいいって許可もらったしね!」
****
「メリーって告白しないの?」
チョコチップクッキーを食べながらそらぴょんが聞いてきた。
森中部長がいなくなった家庭科室で、相変わらずお茶会みたいな活動中に。食べてるのはどこのスーパーでも売ってる箱入りのクッキーだけど。
「……。」
同じようにチョコチップクッキー食べる私は今口に入れちゃったばかりで何も話せない。
「まぁメリーのことだから俺が言うことじゃないし、メリーのタイミングとか気分とかあると思うけど、ずっと告わないままでいいのかなって」
「……。」
「たまにメリーの話聞くけど、メリーは…」
クッキーに全部水分持ってかれて口の中がパサパサだ。このままじゃ上手く声が出せなくて、持っていたペットボトルのお茶をグビーっと一気に飲んだ。
「私、告白しようと思うの!!」
「え?もう決まってたの!?」
「さっき決めた!」
「えっ!?」
ドンッと勢いよく蓋を閉めたペットボトルを調理実習台の上に置いた。
考えてた。
どうしようかなって、気持ち言ってもいいのかなって。
“それで、好きな人に渡すんだよ!”
これを逃したらまた言えなくなっちゃう気がする。
タイミングは今しかないと思うの…!
「そらぴょん!私チョコレート作って告白する!」
なぜ人は気合いが入ると立ち上がってしまうんだろう。さっきの森中部長みたいに、力が入り過ぎちゃって危うくイスが倒れそうになった。
「メリー…」
「告白しようと思うの!小鳩に!」
グッと握りこぶしを作って少し上を見る。 ここは家庭科室だから空も何も見えないけど、あの空に向かって誓いを立てるように。
「「……。」」
しばらくそのポーズ取ってみたんだけど、全くそらぴょんの反応がなくてすぐに目線を下げた。
「…なんか言うことないの?てゆーか驚いたりしない?今サラッと暴露したつもりなんだけど…」
「え?何?あ、あぁ、ゆいぴーのこと?」
結構ここぞとばかりに言ったつもりだったんだけど、変わらずクッキー頬張ってるそらぴょんにこっちからリアクション求めちゃった。
「そっかー!って思ったけど、そこまで特には。だって最初、メリーはゆいぴーが好きでチョコ研入ったと思ってたから」
「…確かに!!!」
そーいえばそんなこと言われたな!
あの時はそんなつもり全然なかったし、違うって否定してたけど、それがこうなるとも思ってなくて。
「もっと驚いてほしかった?ごめんね、リアクション大名になれなくて」
「いいよ、大名までは求めてないし」
ササッと乱れた髪を直しながらしれっとイスに座った。
別にサプライズ発表したいわけじゃないから、ただ普通に言うのはちょっと恥ずかしくて勢いに任せて言っただけだから。
「でもゆいぴーならいいと思う」
もう一度クッキーの箱に手を伸ばして新しくクッキーを取り出し、そのあと私にどうぞと箱の開いた方を向けた。
「だってゆいぴーいいやつじゃん!」
ケラっと笑って、すっかり見慣れちゃったこの空色の髪も明るい気持ちにしてくれるものだよね。
「友達もできたし!」
「え、そーなの!?誰?クラスの子?」
「俺!」
「あー、じゃあまだできてないなそれ~」
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