Three Chocolate)恋のチョコレート
Magic.1気付いた気持ち
第28話
「今年の売り上げはチョコ研史上最高の売上額だったよ!みんなのおかげ、ありがとう!」
文化祭が終わって初めての部活は森中部長のご機嫌な電卓を叩く音と共に始まった。
クッキーを急遽追加で作ったこともあり、かなり好調で森中部長から笑みがこぼれまくってる。
それを見てそらぴょんもなんだか嬉しそうな気がするし、小鳩だって…
あれからずっと小鳩のことを考えてる。
自分でもなんでこんなに小鳩でいっぱいなのかわからない。
小鳩のことを思うと…
「柳澤さん?どうかしました?」
「えっ」
「いつも鳥みたいに騒がしい柳澤さんが大人しいなんて何かありました?」
隣に立っていた小鳩がこそっと話しかけて来た。
妙にドキッとしちゃって、恥ずかしい。
てゆーか鳥って!?何の鳥!?
「…っ、別に。私にだって静かにしたい時くらいあるの!」
「そうですか」
ふーんといった表情で小鳩が前を向いた、文化祭でのチョコ研の功績を話す森中部長の方を。
確証を得たわけじゃないけど、そうなのなかってぐらいで絶対とは言えないんだけど、小鳩は森中部長のこと…
あ、思い出したくない。
小鳩と森中部長が話してたことなんか思い出したくない。
あの時の小鳩の顔なんか…!
「柳澤さん」
「部長の話聞いてるよ(嘘)!?だから静かにしてるんだよ!?」
「いえ、そうではなくて。告白は成功されたんですか?」
「………え!?」
目玉が飛び出るかと思った。
そんな真顔で聞いて来ないでよ。
いや、真顔なのはいつものことだけど!
「な、なんでそんなこと聞くの?興味あった…?」
「はい、チョコレートまで渡しましたからね」
……。
小鳩が作ってくれた魔法のチョコレートはオージ先輩には渡せなかった。
未開封のチョコレートがまた増えてしまった。
開けられないまま2つ並べて棚にしまってある。
私にくれたチョコレートと小鳩が‘誰か’にあげるつもりだったチョコレート。
「そんなのこっ、小鳩気にするっけ!?私にそんな関心ないじゃん!」
「……。」
相変わらずのしかめっ面で私の顔を見てくる。
それってどーゆう意味なの?
私の告白事情聞きたいと思ったの!?
「…ないですね」
「ないじゃん!!!」
ないんだ!?
まぁちょっと期待しちゃった自分がいるのがあれだけど。
そーだよ、小鳩はそーゆう奴だよ知ってた知ってた。
最初から私に興味なんかないよ。
“そのおかげで僕は自由に活動させてもらってますから”
あんな風に心込めて言ってもらうことなんか私には…
え?待って待って。
期待するって何を?
何を期待しちゃってんの!?
「詩乃ちゃん?」
「はい、すみませんっ」
やば、大きな声出しちゃったから森中部長の話聞いてないで喋ってるのバレた!
「話続けてもいい?」
「大丈夫です!どうぞどうぞ!」
サッと指をキレイにくっつけた手のひらを前に差し出し、森中部長の方へ向けた。
チラッと小鳩の方を見ると素知らぬ顔をしていた。
…ちくしょう、小鳩から話し振って来たくせに。
「これでテスト期間始まっちゃうからしばらく部活は休みね、次の大きなイベントはチョコ研としてやるのは…バレンタインまで特にないかなぁ。いつも通りの通常の活動が続く感じね!」
サクッと話を終わらせじゃあ今日はこれでと、森中部長が開いていたノートを閉じた。
会計やら雑務処理をしてる森中部長は普段ここに顔を出すには珍しくて、今日もこれで帰ろうとしてた。
またしばらく森中部長に会うことがなくなってしまう、かもなぁ…
「部長、ちょっといいですか」
隣でスッと手が上がった。手の上げ方も真っすぐでキレイだった。
「お話があります」
その言葉にドクンッと心臓が波打つ。
何?何の話?小鳩が森中部長にって…!?
「何、小鳩くん」
「あの…」
“チョコレート止めようと思うんです”
あ、もしかしてその話…?
まだ小鳩言ってなかった!?
あ、それは…っ
「私も話があります!」
小鳩の声に被せるように、負けないぐらいピシッと右手を上げた。そのまま間髪入れず割って入った。
「打ち上げしませんか!?売り上げもよかったですし、ここは盛大にお祝いでも!みんなで!!!」
小鳩の次の言葉を聞きたくなかったから。嫌な予感がして、思わず強引に。
「ね!!!どう、そらぴょん!!」
「え、急に俺!?いーんじゃない!?すっげぇいいよ!」
誰を見ていいかわからなくてずっと黙ってたそらぴょんに投げかけた。きっと賛同もしてくれるだろうと思ってたし。
「ね、いいよね!どうですか、森中部長!」
やたら力が入っちゃって、ガンガン目が乾いた。
お願い、いいって言って!森中部長許可して!!
「楽しそう!いいね、やろうよ!」
「いいですよね、決まりですね!みんなでお菓子食べましょう!」
ノリ気で森中部長も賛同してくれた。
あ、よかった繋がった。
まだ…
だからあとは小鳩も…
って、控えめに隣を見た。
「……。」
全然理解できなそうな顔はしてるけど。
「どうかな…?小鳩は」
「…じゃあ、僕はお菓子を作ればいいんですか?」
え、話早い!!!
今ので瞬時に理解してくれたの!?
そんなことは言ってないけど、作ってくれたら嬉しい!
「…いいの?」
「チョコ研の僕の役目はそうですから」
「…もうチョコレート作らないって言ったのに?」
「作りませんよ、チョコレートは」
…チョコレートは、って言い方が気になって。
だけど、どうしてなのか聞きたいのに聞けなくて。
だって教えてくれないんじゃないかって思うから。
ただ黙ったまま前を向くしかなかった。
少し俯いて。
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