第2話 悪夢
発毛剤を使いはじめて一週間後だった。
段々と頭痛が酷くなっていた。それ以外はなんの以上も診られない。使い方の注意喚起事項には、頭痛等が診られる場合即時中断し医者にかかれと書いてある。俺はそれがどうも納得いかず、頭痛さえ我慢すれば何とかなるのじゃないか知らん?と思いこれを拒否。折角購入したのだから最後まで遣いきってしまおうというどうしようもない貧乏根性を発揮し、頭痛をはね除け使い続けた。
それによって、ビバ!発毛剤!!等と言っていた1週間前とは違い、上司の罵詈雑言に耐えきれずメソメソしていたり、客先には元気ないねどうしたの?と心配される始末。何も手に付かないので夕飯を作ろうと帰宅。しかしこの前罵詈雑言を浴びせられたばかりで、心が折れることを恐れた俺は仕方なくスーパーに寄り、割引シールの貼られた惣菜を購入し家路についた。のだが、既に嫁が夕飯を用意していてくれたものだから俺の購入してきたコロッケやメンチカツ、ポテサラ等は朝ごはんに回される始末。購入してくるならそうすると予め言って頂きたいとぷんすかしている嫁の顔を見ながら、君も何も言わず買ってきたりしてるじゃあないか、と思うのだが、また罵詈雑言は聞きたくないので止めた。
明くる日、発毛剤の効果は頭痛に加えて目眩や立ち眩みの症状まで出てきた。いよいよかと思ったが、やはり貧乏根性が出てしまい最後まで使うことにして鏡を見た。
するとそこには珍妙な髪型をした俺がいた。どう珍妙かというと、髪型、というより、1本の図太い髪の毛が頭の上にある、という状態だった。普通であれば何万本という髪の毛があり、それが1本1本長短を作り上げ髪型という1種の芸術を作り出しているのだが、その芸術をたった1本の図太い髪の毛が作り出しているのである。つまり、両端のもみ上げから裾、そして頂点に至るまでが1本の髪の毛で出来上がっている。なので、櫛を髪の毛にあてても櫛が折れ曲がり、ドライヤーをかけても1本の図太い髪の毛は濃度も濃く、なかなか乾かない。その上、セットしようにも、巨大なカツラを被っているようなものなのでセットも何も出来ず、ただただ頭の形に合わせた図太いカツラのような1本の髪の毛が頭上にあるのである。
あの何万本もあった髪の毛が一夜にして1本の髪の毛にまとまってしまったのだろうか?
仕方なく私はそのまま出社することとなったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます