おっさん珍道中5
紫音
第1話 発毛剤
薄くなったな
鏡を見ながら思う。
元々おでこは広い方だ。しかし最近、気に留めないようにしていたがいかんともしがたい事態になってきている。
これはいかん。育毛剤でも発毛剤でも買ってどげんかせんといかん
てな事で早速ポチポチとスマホでネットサーフィンしまくり、評価、継続性、価格、効果・効能の点を重点的に見て、これだと思うものを注文。
これで私は安泰だと安堵した。育毛剤と発毛剤は違うというので発毛剤を購入することにした。
どうしても生え際部分と分け目が気にかかる。ストレスでハゲて来ているのは分かっているので、先にストレスをどうにかしろと思うのだが、そうもいかん。他人が変われないなら自分が変わるしかない。
2日後、届いた発毛剤を使ってみる。付けたところが少々温かく感じる。きっとこれが効いている証拠なのだと自分に言い聞かせる。
翌朝、いつもより抜け毛が少なくなっている!!なんたる効果だ!1日目にしてここまで効果が現れるとは思ってもいなかったので、ちょっと踊ってみたりした。
ルンルンになって会社に出社。良い仕事は良いプライベートから。いい加減にテンションが上がっている私の足を引っ張ってくる上司の小言や罵詈雑言も、気にならなかった。何故なら俺には発毛剤があるから。客から何を言われようが気にもならなかった。発毛剤があるから。定時で上がり、夕飯の買い出しをして夕飯を作る。嫁と息子に酷評される料理を出したが関係ない。俺には発毛剤があるから。
なんて便利な言葉なのか。全ては、発毛剤があるからということで片付くじゃないか。それだけ今までどれだけ気を遣って生きてきたのか、世の全ての罵詈雑言は発毛剤があることでここまで見事に見方が変わるものだとは思わなかった。ビバ!発毛剤!
てな具合で毎日発毛剤を使い、毎日が充実していく当たり前の幸せを噛み締めながら生きていた。しかしここで、遂に発毛剤の威力をまざまざと見せられることとなった。
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