第6話

もの凄い安らぎ感と、


何か分からない奇妙な感情が押し寄せて来て道雄は、


立っていられなくなるほどだ。


通雄は小犬を彩に返して、この奇妙な感情に耐える。


 


彩に犬を返すと 又奇妙な感情に襲われる。


寂寥感だ、この小犬と離れた途端、


強い寂寥感に襲われた。


又この犬を抱きたいという感情が通雄を襲う。


しかし、それを何とか押さえる。


そして彩を見ると小犬を抱きながら、


陶酔しているような、 顔が僅かに上気し、


夢心地といった様に見える。


 


通雄はそっと彩の肩に手をかける。


すると彩は今まで眠っていたのが、


目を覚ま した様に通雄の顔を見つめる。


 


そして「飼いましょうよ」と、彩が言う。


通雄も今までの 自分の好みや、


希望など吹っ飛んで、


この小犬が欲しくて堪らなくなっていた。


 


気がつくと犬を買う話を店員としていた。


二人は直ぐにも、この小犬を連れ帰りたい気持ちだった。


しかし、店員の話ではまだワクチンが、


済んでいないのでワクチンをうって からでないと


言われワクチンが済む迄待つ事になった。


それと、あまりに決断が早いので


「一晩考えてからの方が良いですよ」 と言われてしまった。


 


二人の決断があまりに早いので、


気が変わる事も有ると、気を遣ってくれた様だ。


兎に角、一週間後にはワクチンが済むので、


その後ならば何時でも良いと言う事に決まった。


 


二人は一緒に店を出ると何だか


夢を見ているような気がしてきた。


本当に、今の犬を買ったのだろうか、


何か現実味がない。


今度来たら、この店ごと 無くなっているんじゃないかとか


変なことを考えてしまう。


妙な気持ちだ。


 


あの犬のことが頭から離れない。


このまま引き返そうかと、 そんな気さえしてしまう。


こんな事じゃいけない、我慢がまんと心の中で呟く。


 一日千秋とは、こんな事を言うんだなと 彩と通雄は思った。


二人とも子供のように、 この一週間をあの小犬の事ばかりを考えて過ごした。 そして待ちに待った日がやって来た。

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