「合羽産(カッパサン) 珍味」入荷

 カッパサンの肉は箔杉箱(パック)詰めにされる。そこへシールをペタリと貼った。シールには「合羽産(カッパサン) 珍味」と書かれてある。それから表に出て、ブラックボードにおすすめメニューを書き込んでいく。

 ブラックボードには白い文字でこう書かれてあった。

 「本日のおすすめメニュー、カッパサン揚げちゃった (合羽産 珍味をから揚げにしたもの)。お土産にもどうぞ」


 早くも客が来ていた。大型犬を連れた三人組の客である。


「もう少しお待ちください。いま、準備をしていますので」

「おお、あの珍味が入荷したのか。これは期待できるぞ」

 男性の客が家族に話すと、子どもが質問したようだ。

「お父さん、その珍味って美味しいという、?」

「おおそうだよ。このお店はまるで異世界に行った気分にさせてくれるそうだ。珍味やジビエをメインにしていて、そのネーミングにセンスもあってだな。楽しい所なのだぞ」

「あなた、それにとても赤身の魚のようで鶏肉のような歯ごたえに、淡白な味わいが癖になる美味しさと聞いていますわ」

「よく知っているなー。そのとおりだ」

 大型犬はおとなしく伏せをして待っている。


 シェフは内心笑いながら、ポーカーフェイスで開店準備を進めるのだった。そのうちに仲間も起床し、シェフを手伝い始める。それから一時間もしないうちに客の列ができていた。


「みなさま、寒い中ありがとうございます。あと五分ほどで開店いたしますので、今のうちにメニューなどをご覧いただけると助かりますー! なお、本日の珍味は百食限定の合羽産でございます。この機会にぜひご賞味くださいませっ」


 五分後。

「いらっしゃいませ、お好きな席へお座りください」



 いよいよ、今日の営業が始まった。

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