料理名「カッパサン揚げちゃった」

 納品されてきた珍味「カッパサンの肉」を薄く切り分け、酢漬けにしておいた「ハナタカダアカの花」と炒める。味付けは甘味噌。続いて作るのは「カッパサン揚げちゃった」という料理名の、から揚げだ。カッパサンの肉はきわめて筋肉質である。まるでトリのもも肉と間違えてもおかしくない弾力があり、淡白な味わいが楽しめる。


 故郷(あっち)では中級ぐらいの食材調達人(ハンター)なら多少は手こずるが倒せる。故郷にいた頃、俺たちも狩りに出たことがあった。デデという国の沼地付近に群れで生息している。


 群れは3体のカッパサンと1体のカッパサンリダーで構成されていた。頭の上には皿があり背中には亀の甲羅のようなものがある。カッパサンからの攻撃は水鉄砲の攻撃と爪などだった。ただの水鉄砲ではない、あらゆるものを溶かす酸性の水なのだ。


 ジビエ料理専門店のオイタン食堂では、すっぽんの甲羅のようなカッパサンの皿を食器代わりに使い「カッパサン揚げちゃった」を盛り付けて客に出している。その珍しい模様の器を見て「ほしい」という客も出始めていて、お土産用にと提供することも多々あった。また、カッパサンの尻尾も一口大に切り分けられたのち素揚げしてやり、ペットのおやつとして提供している。


 冷凍保存にしていた害獣カクジカの肉を、ミンチにしてスパイスと野菜で練り合わせ、楕円形を作っていく。真ん中を少し凹ませ火の通りを早くする。オーブンにオリーブオイルを塗り、表と裏をよく焼くと、カクジカ肉のハンバーグの完成だ。焼いた後の肉汁にトマトペーストと黒コショウを入れて、混ぜ合わせソースを作る。付け合わせは春キャベツの千切りである。店の屋上で無農薬野菜を育てていて、そこで先ほど収穫したばかりのキャベツだ。


 カクジカの肉を一口大に切り分け、ネギッコらんらんと交互になるように、竹串に刺していく。これに衣をつけて揚げ物にしたり、そのまま焼いたりして、「ネギまでシカ」という、串焼きが出来上がる。


 ウッドチョオテンの果実の固い殻を料理用ハンマーで思いっきりたたく。殻にひびが入ると、料理用ペンチで殻を取り去る。中から出てきたものは、いびつな形をした果実であった。それとオリーブオイルを自動擂粉木機(オートミーター)にかけて、クリーム状になるまで放っておく。こうしてできるウッドチョオテンのソースは、「カッパサン揚げちゃった」用だ。


 カッパサンは体長三十センチ、カッパサンリダーの体長は六十センチである。ほかには害獣ヌウットオリャーの肉も、カッパサンと同じでトリ肉に似ている。だから扱いもトリ肉と同じだ。害獣ヌウットオリャーは大型のネズミである。体長一メートルにもなり、雑食動物なので何でも食べていく。好物は植物であるが、繁殖期などには大群で田畑に現れてはそこを食べつくしていくので要注意だ。


 冷凍術をかけて保存していたトントントンビョーウシの肉を解凍し薄切りにして、しゃぶしゃぶ用にする。カクジカの肉をミンチにして軽く炒める。それから蒸かしてあったジャガーイモノスケという芋と合わせてコロッケを作る。料理名を「コロコロのころげまわる」という。床を転げまわるほどのおいしさに、年齢関係なく、コロッケ通も唸るほどの大人気メニューの一つだ。焼き鳥ならぬ「焼き猪(しし)」は「チョットの角獅子(つのじし)」と呼ばれている害獣の肉を使っている。


 変わった料理名が多いのも、ここ「オイタン食堂」の売りである。普通の料理もある。焼き肉、しゃぶしゃぶ、カレーライス、シチュー、ポトフ、おでん等など。

 

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