料理名「赤池地獄スープ」

 トントントンビョーウシの肉はきれいにスライスして、マンドレイクと一緒にパックに詰める。故郷で魔法を使う時の媒体になる秘薬も、オイタンに来たとたん形を変えた。マンドレイクは極めて小さくなり、鮮やかな緑色のワサービというハーブになってしまった。


 殺菌と消臭効果がある。箔杉箱(パック)に詰めたのち、透明な袋に入れて、さらにシールをペタと貼る。それから袋ごと真空冷凍する。一パック 千円、お土産に大人気である。そのシールには「今年も入荷しました! トントントン拍子に何事もうまくいくという噂のブランド牛、ここに見参っ」と書かれてあった。


 トントントンビョーウシの骨を砕き、トマト、まっかなトウガラシ、赤いピーマン、セロリ、ネギッコらんらんという野菜、トントントンビョーウシの血と肉の塊、スパイスをまとめて大なべに入れてコトコト煮る。


 途中で肉だけを取り出し、一口大に切り分けて、深皿に盛り付ける。その上からスープをかけて、とろけるチーズをのせて完成。料理名は「赤池地獄スープ」。赤いシチューとも呼ばれている。寒い季節には大人気のスープである。


 「辛そうな見た目の料理をおそるおそる口に運ぶ。その瞬間おそってきたのは予想していたよりも圧倒的な辛味。まるで火山が爆発したかのような熱をもったそれは口の中を蹂躙してくる。が、その中にあるのは野菜の甘みで救われる。この甘みがあるからこそ、辛味を最大限に感じられる。そこに肉のしっかりとした食感と、とどめといわんばかりにチーズの濃厚さが舌に絡みつく。これは――、うまい。こんな料理は初めてだ」という感想をたくさんもらっているぐらい、大人気のスープだ。

 

 これは隠し味に入れてあるまっかなトウガラシがピリリと刺激をくれる。トマトの酸味とネギッコらんらんの甘みもある。体が温まる一品でもあった。


 肉をとった後は捨てずに、他の料理に使う。例えば腸をよく洗い、中に、ハーブと塩とを混ぜ込んだ肉を詰めて、適当な長さに切っていく。それを蒸すのだ。こうして出来上がったのは、即席のソーセージである。アルコールのおともにと提供される。


「ピット、うまくいきそうか?」と、シェフが言った。呼ばれたピットは腸詰用の機械の前にいて、機械から押し出されてきた生ソーセージを程よい長さのところで、ねじって形を整えている。このソーセージ作りはピットが担当している。調合したハーブ塩や胡椒の分量を作る日の室温で調節する。


「うんー」

 最後の長さを調整し終わると、返事をした。この後、蒸し器に入れて蒸したのちに、フライパンで焼き色を付けて客へ提供されるのだ。

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