ローズマリーの香りがあるだけで思い出してしまう過去

釣ール

寒がり

 ローズマリーについて調べることを今はやめている。


 嫌いだからじゃない。

 香りとは別に思い出す嫌な記憶があるからだ。


 ローズヒップの紅茶は大歓迎だいかんげい

 でもローズマリーはなるべくかがないようにさけている。


 行きたくなかった場所で踊らされそうになった過去。

 一番好きな味だったお菓子がローズマリーで作られていた。

 その時の味と自分にふりかかる今とまったく関係のない努力。


 聞きたくもないおしかりに陰で笑って何度リベンジをちかって忘れたか。

 ローズマリーの香りはだんだん好きな香りというよりやりたくもない行動の前にやってくる香りだと記憶してしまった。


 好きな香りが恨みの記憶になる。

 一度生えれば簡単にぬけない海外でそだったらしいローズマリーの生命力せいめいりょくはまるで自分の中でめばえている人間へのにくしみそのものだ。


 そんなことを言いながら久しぶりにローズマリーをかいでみた。


 すっかり弱った鼻にやってくる洗濯せんたくでも落ちない強めのにおいは「あなたの記憶力と一緒ですよ」とあおられている気分になる。


 これが『好きな』香りか。

 もうちがう植物の香りでぬりかえよう。


 むだだと知りながら今日も良い思い出を作るためにハーブをかいあさる。

 そこにローズマリーはない。

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