第4話 自転車に乗って

 決まった時間の登校、決めた位置に自転車を停める。意味もなく息を出して、白くもあもあっとさせる。今日はまた一段と冷えたと感じるから、やっぱり意味はあるかも。

 自転車置き場から歩き出す。自転車通学の男子とすれ違うな、そう考えていた。軽音部でベースを演奏する人だと気づいたら目が追いかけていた。日常のどんな動きも絵になる人なんじゃない?


 結局、描きますって約束は言えてなくて、相手が話を続けてくれたから沈黙は無かったけど。そんなんじゃダメなのに。

 慌てて止まる自転車の音に、身体が止まる。男子は顔だけをこっちに向けた。

「おはよっ!」

 予想もしてない瞬間で、慌てて頭を下げた。顔を上げたら相手は笑顔だった。そういえばクラスはどこなんだろう。ぼんやり眺めてたら、割りと近いところに自転車を停めて、駆け寄ってくる。

「お互い自転車通学か。寒くない? ちっちゃいけどいる?」

 ブレザーのポケットから出してきたのは、ミニカイロ。出した指先、私がしっかり掴むまで待っててくれる。じわ〜っと広がる暖かさに思わず声が出る。

「ちっちゃくても結構あったかいよな。自転車置き場、奥のほうから歩いてたな。一年てことか。どおりで知らないわけだ」

 あなたは先輩で。先輩なのに私、失礼な反応ばかり……!

「SNSの、投稿してるイラストだけど、気になるやつにコメントしても平気?」

 少し見上げる身長。鼓動が少し速くなる。先輩の目を見てから、パッと頷いた。

「普通のメールじゃないから、見たときにでも返事くれたら嬉しいかも。俺の呟きにコメントしてくれてもいいし、まぁ任せるよ」

 ウンウンと頷いて返す。校舎に入って、先輩は階段を上がっていく。私は一階まで。

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